2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19590068
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久下 理 Kyushu University, 理学研究院, 教授 (30177977)
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Keywords | 生体膜 / リン脂質 |
Research Abstract |
哺乳動物細胞において、主要リン脂質の一つであるボスファチジルセリン(PS)は小胞体で生合成され、その多くがミトコンドリア内膜に輸送されミトコンドリア内膜酵素であるPS脱炭酸酵素によりホスファチジルエタノールアミン(PE)へと変換される。このPS脱炭酸経路は動物細胞において、細胞膜や細胞内の各オルガネラ膜のPEレベルを正常に保つために必須の経路である。しかしながら現在、この経路に関わるリン脂質合成酵素に関しては多くのことが明らかにされているものの、PSの小胞体からミトコンドリアへの輸送機構、及びミトコンドリア外膜から内膜への輸送機構はほとんど理解されていない。我々は、これまでに、PSの小胞体からミトコンドリアへの輸送には、ミトコンドリアと接触している小胞体の特殊な膜領域(MAM)、細胞質タンパク質S100B、ミトコンドリア膜タンパク質MSBP1が関与することを明らかにしていた。さらに本年度、MSBP1と相互作用する興味あるタンパク質、Mitocoilを同定した。Mitocoilは、これまでに機能解析・性状解析が全く行われていないタンパク質であるが、同タンパク質を過剰発現あるいは枯渇させるとミトコンドリアの形態が異常となることが判明した。従って、Mitochoilは、ミトコンドリアへの脂質輸送とミトコンドリアの形態維持に関与するタンパク質と考えられた。我々は、モデル細胞の酵母を用いてもPSのミトコンドリア内膜への輸送機構に関与する遺伝子、及び遺伝子産物の同定を試みており、本年度、酵母の遺伝子(PMT35と命名)が、PSのミトコンドリア外膜から内膜への輸送に関与することを示唆する結果を得た。興味あることに、ヒトにはPMT35のホモログが存在し、来年度は、ヒト培養細胞株を用いて、そのホモログhPMT35の詳細な機能解明を試みる予定である。
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