2009 Fiscal Year Annual Research Report
オータコイドによる血管新生の制御を介した線維症治療の基礎研究
Project/Area Number |
19590072
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Research Institution | Nihon Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
林 泉 Nihon Pharmaceutical University, 薬学部, 教授 (90172999)
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Keywords | 細胞・組織 / 生理活性 / 薬理学 / 血管新生 / 線維化 / オータコイド / プロスタグランジン / 神経ペプチド |
Research Abstract |
平成20年は、膜の損傷による創傷治癒、さらには組織の線維化とオータコイドの関与について、特に神経性メディエーターに焦点を絞り、中枢や末梢組織に広く分布し、求心性ニューロンにおいて侵襲に対して防御的な役割を演じる神経性ペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が胃粘膜の損傷や潰瘍に対してどのような作用を及ぼしているのかを検討し、組織侵襲から組織修復における生体防衛にこの神経性ペプチドが関与することを示した。 本年度はCGRPの役割をさらに掘り下げ、組織の線維化に深く関わる血管新生の観点から、この神経性メディエーターの作用を解析した。まず血管新生のin vivo評価系としてスポンジ皮下移植モデルを用いて検討した。CGRPノックアウトマウスではその野生型に比べ、新生血管の増殖が有意に低下していることが判明した。更にLewis lung carcinoma腫瘍細胞を担癌した際に、やはりCGRPノックアウトマウスにおける腫瘍増殖と腫瘍組織における血管新生は有意に低下した。一方野生型マウスにCGRP拮抗ペプチドであるCGRP8-37を持続投与すると、Lewis lung carcinoma腫瘍細胞の増殖および血管新生は減少した。加えて野生型マウスの坐骨神経を除神経することにより、除神経部位におけるLewis lung carcinoma細胞の増殖は抑制された。また腫瘍細胞を移植した部位における後根神経節でのCGRP前駆体mRNAの発現は上昇し、その発現増加は除神経処置により抑制を示した。これらの結果から、知覚神経一次線維を含む神経系から産生される内因性CGRPは、腫瘍増殖とそれに伴う血管新生を増強すること、さらにCGRPがそれらの増殖を抑制する治療標的分子となることが示唆された。
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