2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19590094
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
有竹 浩介 Osaka Bioscience Institute, 分子行動生物学部門, 研究員 (70390804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤森 功 大阪薬科大学, 薬学部生体防御学研究室, 講師 (70425453)
黄 志力 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究副部長 (10321704)
星川 有美子 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (10390808)
丸山 俊彦 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (70414133)
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Keywords | プロスタグランジンD_2 / リポカリン / プロスタグランジンD合成酵素 |
Research Abstract |
リポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)は、脳膜やオリゴデンドログリアで産生され、脳脊髄液に分泌された後、前脳基底部のくも膜に局在するPGD受容体に作用し情報を伝達する。しかし、PGD_2は水溶液中では比較的不安定な物質であり、容易に脱水反応を起こして、PGJ_2、Δ12-PGJ_2、15-deoxy-Δ12,14PGJ_2(15d-PGJ_2)などのJシリーズのPGへと変換する。従って、脳脊髄液にはPGD_2を安定化して標的組織に輸送する機構が存在すると考えられる。L-PGDSは脂溶性低分子の結合活性を有するので、我々は脳脊髄液に分泌されたPGD_2の輸送と代謝にもL-PGDSが関与する可能性を考え、以下の実験を行った。1)表面プラズモン共鳴法を用いてL-PGDSとPGD_2の結合実験を行ったところ、L-PGDSはPGD_2と強力に結合し、その結合は可逆的であり、その結合親和性はレチノイン酸やビリルビンに対する親和性と同等であった(KD=20nM)。2)L-PGDSとPGD_2との結合を、NMRによるタイトレーション実験によって調べたところ、可逆的な結合が裏付けられ、かつ結合部位はPGD合成酵素活性中心であるCys65付近であることが判明した。3)PGD_2は緩衝液中やアルブミンの存在下では容易にJシリーズのPGへと変換するが、L-PGDS存在下ではほとんど分解されなかった。4)JシリーズのPGをL-PGDSと共存させると、5分以内に不可逆的に結合した。これらの結果から、PGD_2はくも膜などの細胞内でL-PGDSによって産生された後に細胞外へ分泌され、脳脊髄液中のL-PGDSに捕捉されて標的組織まで輸送され、DP受容体を刺激して情報を伝達する。一方、JシリーズのPGなどのPGD_2分解物は、L-PGDSに強固に結合して不活化され排泄されると考えられる。
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