2007 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤をはじめとするヌクレオシド系薬物のトランスポーター介在輸送と薬効との関係
Project/Area Number |
19590135
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菅原 満 Hokkaido University, 北海道大学病院, 准教授 (60332467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 剛 北海道大学, 大学院・薬学研究院, 講師 (00322826)
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Keywords | トランスポーター / ヌクレオシド / ENT / CNT / 膜輸送 |
Research Abstract |
ヌクレオシド系化合物の体内動態(組織、細胞内移行)には,これらの化合物を膜輸送するトランスポーターが深く関与している.これら薬物の血液中濃度と組織到達濃度や薬効との関係を明らかにするためには、病巣あるいは正常組織における各トランスポーターの活性と薬物蓄積量との関係を詳細に検討する必要がある.そこで本研究では,トランスポーターを介して輸送される薬物の細胞内への取り込み速度や蓄積量と,その細胞に発現するトランスポーターの種類(輸送特性)および発現量との関係を明らかにすることを目的とした. 促進拡散型であるENT,濃縮型であるCNTの両方を発現しているBeWo細胞を用いて取り込み実験を行った.基質としては,抗がん薬ゲムシタビン,抗ウイルス薬リバビリンほか,内因性,外因性のヌクレオシド系化合物を用いた.まずCNTとENTの関与を明らかにする目的で,薬物取り込みに及ぼすNa^+およびENT特異的阻害剤であるNBMPRの影響について検討した.その結果,NBMPR存在下においてCNT依存的取り込みが,Na^+非存在下においてENT依存的取り込みが認められた.しかしNa^+存在下では予想に反しNBMPRを添加することで取り込み量の上昇が認められた. そこで,Na^+存在下における取り込み量とNa^+およびNBMPR存在下における取り込み量の差は,双方向性のトランスポーターであるENTを介した排出が起きているという仮説を立て,アフリカツメガエル卵母細胞を用いて取り込み実験を行った.その結果,ENTの発現量が上昇するにつれてNa^+存在下における取り込み量が減少した.したがってCNTとENTが共発現した細胞では取り込まれた薬物がENTによって排出される可能性が示唆された. 上述の検討において,卵母細胞の容積から換算すると,細胞内に薬物が飽和する前にENTを介した排出が起きているものと考えられた.そこでこの現象を説明するために,数理モデルを作成し検証した.その結果,細胞内に取り込まれた薬物は細胞膜内側の表面において局所的に高濃度になることが示唆された.また10分間の取り込みにおける細胞内薬物量のシミュレーション値は実測値を反映した.したがって,CNT-ENT共発現細胞において,細胞内に取り込まれた薬物は,CNTにより細胞膜内側に局所的に濃縮され,さらに生じた細胞内外の濃度勾配により,双方向性のトランスポーターであるENTを介して排出される可能性が示唆された.臓器によってトランスポーターの発現量や分布が異なるため,この結果はヌクレオシド系薬物の各臓器への分布を予測する上で有用であると考えられる.
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