2007 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤による血管障害の発現機序解明と予防・治療策の確立に関する研究
Project/Area Number |
19590146
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊藤 善規 Gifu University, 大学院・医学系研究科, 教授 (50159927)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 了三 九州大学, 大学病院, 教授 (90112325)
江頭 伸昭 九州大学, 大学病院, 准教授 (80352269)
|
Keywords | メシル酸ガベキサート / メシル酸ナファモスタット / 静脈炎 / ATP / ネクローシス / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
メシル酸ガベキサート(GM)は、トリプシン、カリクレイン、プラスミン等の蛋白分解酵素阻害剤として、急性膵炎、慢性膵炎急性増悪期、および汎発性血管内血液凝固症(DIC)の治療に汎用されているが、血管痛や静脈炎などの血管障害をきたすことがあり、臨床上大きな問題となっている。そこで、培養血管内皮細胞を用いてGMによる細胞障害作用をメシル酸あるいは同効薬であるメシル酸ナファモスタットと比較した。細胞生存率は、WST-8を用いたミトコンドリア還元能、トリパンブルー染色、ヨウ化プロピジウム取り込み、により、アポトーシスの判定はTUNEL染色、DNA電気泳動およびカスパーゼ活性化により行った。GM(0.5-5mM)は濃度依存的、かつ時間依存的な細胞生存率の低下を引き起こし、その作用は暴露1時間後においてすでに認められた。この細胞障害作用は、細胞の膨張、細胞膜の障害を特徴とし、カスパーゼ活性化や核の断片化は伴わなかった。GMにより細胞内ATP含量は有意に減少したものの、その作用は細胞障害発現作用よりも高濃度(2mM)で認められた。一方、メシル酸や同効薬のメシル酸ナファモスタットは細胞生存率を低下させなかった。また、GMによる細胞障害は、抗酸化剤であるビタミンE、ヒドロキシラジカル消去剤であるエダラボン、マンニトール、およびジメチルチオ尿素、EGTA、BAPTA-AM、およびNOS阻害剤のL-NAMEでは抑制されなかった。以上の結果から、GMによる血管内皮細胞障害はネクローシスに基づき、その発現機序にNOやヒドロキシラジカルなどの酸化的ストレスや細胞内Ca_<2+>上昇は関与しないと考えられた。
|