2008 Fiscal Year Annual Research Report
医療麻薬適正使用の基盤:遺伝的多型に依存しないモルヒネ活性代謝物生成の個体差
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19590147
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 祐次 Kyushu University, 薬学研究院, 准教授 (90253468)
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Keywords | モルヒネ / グルクロン酸抱合 / UGT / P450 / タンパク質間相互作用 / 活性化 / UDP-グルクロン酸転移酵素 |
Research Abstract |
ヒトにおいてモルヒネ活性代謝物の生成に関与するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)は主にUGT2B7と考えられている。研究代表者らは、シトクロムP450(CYP)3A4とUGT2B7のタンパク質間相互作用により、UGT2B7によるモルヒネのグルクロン酸抱合の位置選択性が変化することを報告している。さらに、本年度は、CYP3A4上の相互作用に関与する領域として、J-helix領域あるいは、その周辺領域が関与することを見出し報告した(Mo1.Pharmaco1.誌)。UGT側の相互作用部位についても、基礎的な検討を行った。一方、転移性肝臓癌摘出時にセーフティマージンとして得られた正常肝組織を用いて、CYP含量の個体差がUGTの遺伝的多型に依存しないモルヒネ抱合活性の個体差の要因であるとする作業仮説の検証を試みたが、更に例数が必要である。更に、環境因子による個体差、個体内変動についても基礎的検討を行った。研究代表者らは、これまでに、脂肪酸アシルCoAが、UGTの内因性活性化因子であることを報告している。本研究では、アシルCoAレベルの変動が、モルヒネのグルクロン酸抱合活性にも影響することを、ラットを用いた基礎的検討から示唆した。ところが、ヒト肝ミクロゾームを用いた場合は、アシルCoAによる活性化作用が観察される個体がある一方、多くの個体で活性化が認められない結果となった。この不一致の原因を精査したところ、アシルCoAによるミクロゾームのUGT活性化には可塑性があることが明らかになり、ヒト肝組織凍結融解後のミクロゾーム調製により、活性化作用が消失することが原因であると示唆された。これらのことから、アシルCoAは、動物種、UGT分子種を超えたUGTの調節因子であり、UGTの遺伝的多型に依存せずに、モルヒネ活性代謝物の生成の個体差、個人内変動に関与する可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)