2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン脱アセチル化酵素阻害を基盤とした新規がん分子標的療法の開発
Project/Area Number |
19590148
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
尾崎 恵一 Nagasaki University, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (50252466)
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Keywords | vヒストン脱アセチル化酵素 / ERK / 活性酸素 / MEK阻害剤 / がん分子標的療法 / オーダーメード医療 |
Research Abstract |
本年度における研究では、ERK-MAPキナーゼ経路の恒常的活性化が見られるヒトがん細胞に対して、MEK阻害剤によるERK経路の特異的遮断が、新規な抗癌剤として注目されているヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の感受性を大幅に増強する分子機構について明らかにすることを目的としている。そこで、様々な上流の活性化型変異遺伝子を有することでERK経路の恒常的活性化を示すヒト癌細胞株に対して、MEK阻害剤PD184352とHDAC阻害剤HC-toxinとの併用処理を行い、その細胞死誘導のmediatorとして同定した活性酸素(ROS)の蓄積のメカニズムに焦点をあてて検討した。すなわち、HDAC阻害剤とMEK阻害剤との併用によるROS蓄積の原因を、ROS産生系と消去系に分けて検討した。その結果、まずBim、Bikなどのアポトーシス関連Bc1-2ファミリーの発現誘導によるミトコンドリア膜の透過性上昇に基づいた、ROS産生系の亢進が起こっていた。更に、抗酸化酵素であるGlutathione peroxidaseのmRNA発現と酵素活性が顕著に減少し、ROS消去系の低下が見られた。従って、ROS産生系の亢進と消去系の低下が連動してROS蓄積をひき起こし、本併用療法による細胞死誘導増強作用が発現すると考えられた。また、これらの現象は、正常細胞には見られず、ERK経路の亢進した癌細胞特異的であり、本併用療法が極めて有効ながん治療戦略となる可能性を提示していた。
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