2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン脱アセチル化酵素阻害を基盤とした新規がん分子標的療法の開発
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19590148
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
尾崎 恵一 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (50252466)
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Keywords | ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / 活性酸素 / ERK-MAPキナーゼ / PI3キナーゼ / シグナル遮断剤 |
Research Abstract |
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の感受性がERK-MAPキナーゼ経路の活性化レベルに依存し、ERK経路の恒常的活性化のみられるがん細胞では、ERK経路遮断が50倍以上の感受性増強につながることをin vitroレベルで見出していた。本実施研究においては、HDAC阻害剤とERK経路遮断薬としてのMEK阻害剤との併用による相乗効果の発現する分子メカニズムの解明をめざし、さらにin vitroレベルでの併用効果の検討を行った。まず、本併用療法による細胞死誘導増強効果発現には、そのmediatorとしての活性酸素種(ROS)の細胞内蓄積が必須であることを明らかにしている。ROSの最大の発生部位としてはミトコンドリアが考えられ、apoptosis誘導因子であるBimやBikなどのBH-3 only proteinの誘導によりミトコンドリア傷害がすすむことでROSの放出が誘導され、かつ、抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼの発現抑制による抗酸化力低下が連動することによって、致死的なROS蓄積に至ることを明らかにした。また、その遺伝子発現制御にはRb-E2F1経路が関わっていると考えられ、現在クロマチン免疫沈降法によりさらに詳細に解析している。次に、担癌ヌードマウス(xenograft model)に対する本併用効果の検討を行うにあたって、新規HDAC阻害剤K-32,197,198(関西大学上里教授より提供)を用いた併用効果について解析したところ、in vitro効果については認められたものの、in vitroレベルでは著しく弱かった。そこで、新たに経口HDAC阻害剤として臨床開発のすすむMS-275を用いて併用効果を検討した。B-RAF活性型変異によりERK経路の恒常的活性化のみられるヒト大腸癌細胞株HT-29の担癌ヌードマウスを作成し、MS-275単独、およびMEK阻害剤PD184352との併用効果を検討したところ、併用による相乗効果が劇的に認められた。以上より、本併用療法の有効性がin vitroレベルにおいても証明され、このことは副作用軽減、制がん作用増強の観点から今後のHDAC阻害剤を用いた癌治療において重要な知見であると考えている。
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