2008 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性腎症の増悪因子であるアポE2遺伝子・高レムナント血症と薬剤介入
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19590155
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
衛藤 雅昭 Ohu University, 薬学部, 教授 (90133818)
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Keywords | 糖尿病性腎症 / 高レムナント血症 / レムナントリポ蛋白 / 高脂血症 / アポE2遺伝子 / TGF-β / 腎メサンギウム細胞 / VLDL受容体 |
Research Abstract |
以前、われわれはアポE2遺伝子が糖尿病性腎症を増悪させる遺伝子であることをはじめて見出した。アポE2遺伝子は高脂血症関連遺伝子であり、血中レムナントリポ蛋白や中性脂肪(TG)を増加させる遺伝子である。レムナントリポ蛋白はTG-rich、コレステロールrich、アポE-richで動脈硬化惹起性リポ蛋白として知られていた。したがってアポE2遺伝子が糖尿病性腎症を増悪させる機序として、レムナントリポ蛋白が増加し、これが腎障害を起こしている可能性が最も考えられる。日本人糖尿病患者数を740万人とすると、その約7%すなわち数十万人がアポE2遺伝子を有し、高TG血症、高レムナント血症を呈しやすい腎症ハイリスク群ということになる。本研究の目的はアポE2遺伝子、高レムナント血症が糖尿病性腎症を増悪させる機序を明らかにすること、そしてアポE2遺伝子と関連した高TG血症、高レムナント血症を薬物によって抑制することにより、糖尿病性腎症の進展を抑えることができるかどうかを検討することである。培養した正常ヒト腎メサンギウム細胞とアポE2を有する糖尿病性腎症患者より得たレムナントリポ蛋白をincubationし、腎メサンギウム細胞へのリボ蛋白の取り込み能を検討した結果、取り込み能の増加が確認された。この系におけるスカベンジャ-受容体、LDL受容体、VLDL受容体の関与についてRNA interference法により検討した結果、VLDL受容体が関与することが明らかになった。 さらに、正常ヒト腎メサンギウム細胞と糖尿病患者由来アポE2-レムナントリポ蛋白とのincubation実験において、アポE2-レムナントリポ蛋白が培養ヒト腎メサンギウム細胞に対してTGF-βおよび細胞外基質のmRNAを増加させることをRT-PCR法により明らかにした。これらの検討によりアポE2-レムナントリポ蛋白が腎糸球体硬化、糖尿病性腎症増悪をさせる機序を明らかになった。今回、フィブラート薬(ベザフィブラート)をこの系に添加する実験を行った結果、PPARαのリガンドであるフィブラートがアポE2-レムナントリポ蛋白によるTGF-βおよび細胞外基質のmRNAの増加を抑制することが判明した。フィブラート薬は糖尿病患者において血中レムナントを低下させ、また、腎メサンギウム細胞に直接作用して、糖尿病性腎症を防御するであろう。
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Research Products
(4 results)