2008 Fiscal Year Annual Research Report
薬物代謝酵素およびトランスポーターの発現に及ぼす腸内細菌の影響
Project/Area Number |
19590163
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
杉山 清 Hoshi University, 星薬科大学, 教授 (80145713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 清美 星薬科大学, 准教授 (60232435)
五十嵐 信智 星薬科大学, 助手 (40409363)
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Keywords | 腸内細菌 / チトクロムP450 / リトコール酸 / シプロフロキサシン / PXR / FXR / 核内受容体 / 抗生物質 |
Research Abstract |
薬物動態には大きな個人差があることが知られており、薬物治療を行う上で注視すべき問題となっている。この個人差を引き起こす原因の一つとして、薬物代謝酵素であるcytochrome P450(CYP)の発現量の変化が関与すると考えられている。本研究では、腸内細菌が肝臓のCYPの発現変動に関与し、薬物動態の個人差を生じる一つの原因になっているであろうとの仮説を立て、この立証を試みた。 腸内細菌が存在しないGerm Free (GF)マウスとSPFマウスの肝臓におけるCYP3aのタンパク質レベルでの発現および代謝活性について検討した結果、いずれもSPFマウスの方が有意に高い値を示した。すなわち、腸内細菌の存在により肝臓におけるCyp3aの発現が増加することが明らかとなった。このメカニズムについて検討した結果、 SPFマウスの肝臓では、腸内細菌の産生するリトコール酸(LCA)が核内受容体FXRおよびPXRのリガンドとして機能し、PXRの活性化を介してCyp3aの発現を増加させている可能性が示唆された。このことをより明確にする目的で、抗生物質シプロフロキサシン(CPX)をSPFマウスに投与した。その結果、糞便中のLCA産生菌量および肝臓中のLCA量が減少し、肝臓におけるCyp3a11のmRNA発現量も減少した。これらの結果より、腸内細菌が特異に産生するLCAが、肝臓のCyp3aの発現を増加させることを初めて明らかにした。 本研究の結果は、抗生物質を始め、ストレス、疾患、加齢等により腸内細菌叢が変化し、 CYPの発現が変動する可能性を示すものであり、腸内細菌叢の変動がCYPの発現変化を介して薬物動態の変動の一因となっている可能性を示唆するものである。
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Research Products
(4 results)