Research Abstract |
中性脂肪が動脈硬化発症・進展にどのような役割を果たしているかについて一定の見解が得られていない.申請者等は,WHHLウサギとは異なる脂質代謝異常を示すモデル動物,食後高TG血症モデルウサギ(PHT)の開発に成功した.そこで,本研究ではPHTおよび対照として健ウサギ(JW)を用いることにより,(I)動脈硬化発症・進展における食後高中性脂肪血症の役割とその機序,(II)抗酸化療法による動脈硬化症予防・改善の可能性,を明らかにすることを目的に,19本年度は,内皮細胞および血管平滑筋の生理機能変化について検討した.[方法]実験には,JW(3ヶ月齢と10ヶ月齢,♂)とPHT(3ヶ月齢と10ヶ月齢,♂)からそれぞれ胸部大動脈を摘出し,内皮細胞無傷および内皮細胞除去標本を作製し,アセチルコリン(Ach),ニトロプルシッド(NP),イソプロテレノール(ISP),フェニレフリン(PE)を用いて 内皮依存性弛緩反応および平滑筋収縮弛緩反応を比較検討した.[結果および考察]Achは,内皮無傷標本において濃度依存性に弛緩反応を惹起した.3ヶ月齢のPHTの内皮依存性弛緩反応は,JWのそれと差は認められなかったが,加齢によりPHTの内皮依存性弛緩反応は減弱した.NPによる血管弛緩反応は,JWに比べ3ヶ月齢のPHTで有意に減弱し,加齢により減弱の程度が大きくなった.ISPによる血管弛緩反応もPHTで有意に減弱した.これらの結果は,PHTでは内皮細胞機能低下のみならず血管平滑筋機能の低下が早い時期から発症し,加齢と共に進行すること,このような機能低下が動脈硬化促進の危険因子である可能性を示唆している.PHTの食後のリポタンパク分画が加齢によってどのように変化するか,PHTの動脈硬化予防,改善の可能性模索実験を継続中である.
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