Research Abstract |
心房細動の慢性化には,心房筋細胞の高頻度,不規則な電気的興奮によってイオンチャネルの量的,質的変化が生じ,心房細動が再発しやすい電気生理学的状況,すなわち,電気的リモデリングが起きる事が知られている。しかしながら,心房細動に伴う電気的リモデリングの詳細な分子機序の解明および予防手段の確立はなされていない。本研究ではK_ATPチャネル遺伝子欠損マウスを用いて心房細動に伴う電気的リモデリングの成立にK_ATPチャネルの活性化がどのような影響を与えるかを検討し,心房細動の停止,再発の予防手段の確立に寄与する事を目的として実験を行った。野生型マウスより心臓を摘出し,ランゲンドルフ心を作成した。心房の高頻度刺激を行い,左房から単相活動電位(MAP)を記録しようとしたが,安定した記録を得る事が出来なかった。そこで,野生型(WT)および心筋細胞膜K_ATPチャネルが欠損しているKir6.2KOマウスの左房を表面灌流し,微小電極法によって活動電位記録を行った。900回/分の頻度で3時間の高頻度刺激を行い,心房より活動電位を記録し,その経時的変化を検討した。WTマウス心房活動電位は時間が経過すると共に活動電位振幅が低下すると共に,活動電位持続時間が延長した。一方,Kir6.2KOマウスの心房活動電位においても同様の活動電位変化が観察された。この事からおそらくL型Ca^2+チャネルおよびK^+チャネルのダウンレギュレーションが起きている事が示唆された。しかしながら,対照時において既に活動電位幅がWT標本に比してKir6.2KO標本で明らかに長かった事から,WT標本においてK_ATPチャネル活動が亢進している事が示唆された。そこで,再度ランゲンドルフ方式の心筋灌流標本を更に表面灌流し,より生理的な状況で高頻度刺激を行い,微小電極法によって活動電位の経時的変化を検討するという機能的研究を再度継続中である。
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