2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内コリン産生系の薬理学的修飾による血管新生の可能性とその機序の解析
Project/Area Number |
19590251
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
柿沼 由彦 Kochi University, 教育研究部医療学系, 准教授 (40233944)
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Keywords | 血管新生 / アセチルコリン / 下肢虚血モデル |
Research Abstract |
アセチルコリン(ACh)には、血管内皮細胞に対してムスカリン受容体およびニコチン受容体の両者を通して、血管新生に関わるシグナル伝達系、たとえばPI3K/Akt系の活性化、その後の非低酸素下でのHIF-1αの蛋白レベルの上昇、VEGFの発現誘導、結果としてin vitroでの血管新生促進作用が存在することが証明できた。この効果をacetylcholinesterase inhibitorであるdonepezilを用いて、マウス下肢虚血モデルを用いて検討した。Donepezilの投与量を低容量(ヒトの場合と同程度)と高容量で比較しても、両者において血管新生促進作用が認められた。いずれも、虚血による下肢筋肉萎縮を抑制し、下肢血液還流を保持し、結果として皮膚温の低下も抑制した。病理学的には、donepezilにより毛細血管の密度が増加し、VEGF陽性の血管内皮細胞の数も顕著に増加した。 この血管新生促進作用は、血管新生不良なnicotinic α7 receptor KOマウスにおいても認められ、donepezilの特殊な作用機序が示唆された。以上から、AChおよびコリン系物質には、血管新生促進効果があることが明らかとなり、臨床応用の可能性が示唆された。donepezilの詳細な作用機序については、acetylcholinesterase inhibitorとしての作用と、inhibitor以外のものとが考えられた。以上のように今回明らかになった新知見については、すでに投稿論文中1件と現在準備中が1件である。
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