Research Abstract |
αシヌクレインの細胞内蓄積モデルについてはいくつか報告があるが,そのほとんどは実際の患者脳に見られるレビー小体とは性質が異なっており,またその作製に非生理条件を必要とするため再現性に乏しいる。パーキンソン病などの発症メカニズムを明らかにする上で,いかにして細胞内でαシヌクレインが蓄積するのかを解明することは非常に重要であり,その知見は治療薬の開発にも有用である。今年度は,これまでの研究結果(特願2005-352486,PCT/JP2006/324786)をより改良し,実際の患者脳に存在するレビー小体の性質とほぼ同じで,かつ再現性のよい細胞内αシヌクレイン蓄積モデル細胞を確立した。この細胞モデルで出現する異常構造物は,1)抗リン酸化αシヌクレイン抗体に陽性,2)抗ユビキチン抗体に陽性,3)チオフラビンSに陽性,4)電子顕微鏡観察により構造物中にαシヌクレインの線維が認められる,5)構造物を生化学的に分画すると,界面活性剤不溶性画分にリン酸化αシヌクレインが存在する,などレビー小体とほぼ同様な性質を有していた。またαシヌクレイン蓄積細胞は,蓄積開始後48〜72時間経過すると顕著な細胞死を引き起こすことが判明した。カスパーゼ3活性測定,TUNEL染色,ポリADP-リボースポリメラーゼの切断アッセイなどの解析により,この細胞死はアポトーシスではないと示唆された。試験管内においてリコンビナントαシヌクレインの蓄積を阻害した低分子化合物を培地中に添加することにより,この細胞死は抑制された。
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