2009 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリ菌の分泌性病原因子の受容体とメンブラントラフィック機構の解析
Project/Area Number |
19590325
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
菅沼 雅美 Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center, 臨床腫瘍研究所, 主幹 (20196695)
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Keywords | ピロリ菌 / TNF-α inducing protein / TNF-α / ヌクレオリン / 発がんプロモーション / 炎症 / 胃がん / NF-κB |
Research Abstract |
ピロリ菌が分泌する病原性因子TNF-α inducing protein(Tipα)は、胃がん細胞に取り込まれ、NF-κBの活性化を介してTNF-αなどの炎症性サイトカインやケモカインを強く誘導し、がん化を促進する因子である。これまで、Tipαの新規結合タンパク質としてヌクレオリンを同定し、さらに本来は核内に局在するヌクレオリンがマウス胃がん細胞株MGT-40の細胞表面に存在することを明らかにしてきた。本年度は、糖鎖修飾阻害剤の処理がMGT-40細胞の細胞表面ヌクレオリンを減少し、Tipαの細胞内への取り込み、及びTNF-αの発現誘導を抑制することを見出した。更に、抗ヌクレオリン抗体を前処理すると、予想に反してTipαの取り込みが亢進され、TNF-aの発現がより強く誘導された。ヌクレオリン抗体処理により細胞表面のヌクレオリンがエンドサイトーシスにより効率よく細胞内に移行したと理解された。これらの結果から、細胞表面に異常に存在するヌクレオリンがTipαの受容体であり、Tipαの取り込み、およびTNF-αの誘導に関与すると結論付けた。次に、5種類のヒト胃がん細胞(MKN-1,MKN-45,MKN-74,AGS,KATOIII)について解析し、ヒト胃がん細胞においてもヌクレオリンが細胞表面に存在していた。また、ヌクレオリン標的DNAアプタマーであるAS1411は細胞表面のヌクレオリン量が多い胃がん細胞に効率よく取り込まれ、胃がん細胞の増殖を強く抑制することを見出した。ヌクレオリンは本来、核小体に存在するタンパク質であるが、炎症あるいは発がん過程において細胞表面に異所発現し、ピロリ菌の分泌性病原因子であるTipαを取り込み、胃がんの発症を促進していることを明らかにした。細胞表面のヌクレオリンは胃がん治療や予防の新しい分子標的となると期待される。
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Research Products
(13 results)