2008 Fiscal Year Annual Research Report
IGF・PI3K・mTORシグナルの抑制を中心とした癌の低酸素耐性機構の解明
Project/Area Number |
19590329
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disaeses |
Principal Investigator |
井上 正宏 Research Institute, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disaeses, 研究所, 総括研究員 (10342990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 洋子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター, 研究所, 研究員 (20359300)
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Keywords | IGF / PI3K / mTOR / 低酸素 / 細胞死 |
Research Abstract |
本研究は、癌細胞の低酸素耐性の分子機構を解明することを目的とした。具体的には、IGF/PI3K/mTORシグナルの環境に応じたON/OFF切替え機構の重要性を明らかにすることを試みた。平成20年度は昨年度に引き続き、低酸素で誘導されるIGFBPが、IGF/PI3K/mTORシグナル抑制と低酸素耐性に関与していることを明らかにして論文発表した。IGFシグナルが酸素濃度によって機能を変えること、その調節にIGFBPの分泌が関与していることが明らかになったことは、今後のがんにおける低酸素耐性研究、およびそれを標的とした治療法の開発を行う上で重要である。次に低酸素下でのIGF/PI3K/mTORシグナルの抑制とエネルギー代謝の関係について検討した。AsPC-1細胞は低酸素で長期間培養すると分裂を停止して長期間生存する。この際、グルコース消費と酸素消費は低い状態に維持されている。腫瘍内の低酸素領域では酸素だけでなく、グルコースの供給も低下している可能性があり、ATP要求量を下げて環境のエネルギー基質の枯渇を回避することはこのような環境での生存戦略として機能している可能性がある。我々はIGF/PI3K/mTORシグナルがこのような休止期の状態では抑制されていることを明らかにした。休止状態のAsPC-1にIGFを添加すると、低酸素下でもグルコース、酸素を消費して細胞分裂を開始する。IGFBPに結合しないIGFはこの刺激効果が増強することから、ここでもIGFBPによるIGFシグナルの抑制が低酸素での生存に関与していることが明らかになった。
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