2008 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチンリモデリング因子ATRXの異常に関連した染色体テリトリーの核内配置解析
Project/Area Number |
19590331
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
和田 敬仁 Shinshu University, 医学部, 准教授 (70359727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福嶋 義光 信州大学, 医学部, 教授 (70273084)
涌井 敬子 信州大学, 医学部, 助教 (50324249)
田辺 秀之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50261178)
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Keywords | エピジェネティクス / 細胞遺伝学 / 分子遺伝学 |
Research Abstract |
個体の発生あるいは細胞の分化・増殖において、「DNA塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現の変化」(エピジェネティクス)の重要性が明らかになり、その破綻は、生殖細胞系列においては精神遅滞に、体細胞においては悪性腫瘍に関連している。 ATR-X症候群は、その責任遺伝子ATRXがX染色体に局在するX連鎖精神遅滞症候群の一つであり、男性の患者で重度の精神遅滞、特異な顔貌、αサラセミア、外性器異常、骨格異常、行動異常といった多彩な症状を特徴とする。ATRX蛋白はクロマチンリモデリング複合体SWI/SNFファミリーに属し、新規DNAメチル基転移酵素DNMT3a/bと共通の構造をもち、αグロビン遺伝子を含む複数の遺伝子発現調節に関わっていると考えられている。しかし、ATRX遺伝子変異によるATRX蛋白の機能喪失により、ATR-X症候群が発症する病態は解明されていない。 最近、染色体の核内における空間的配置(染色体テリトリー)が、遺伝子発現や核高次構造に関連することが示されてきている。本研究において、「クロマチンリモデリング因子ATRXの機能喪失が染色体テリトリーに影響を与え、複数の遺伝子発現調節の破綻の原因となっている」という仮説を立て、3D-FISH法を用いて、核内における染色体テリトリーと遺伝子発現を解析する実験系を確立することを目的とし、3D-FISH法を用いた染色体テリトリー計測のための基本的な手技を確立した。今後の課題として、細胞周期との相関についてもふまえた、さらなる解析が必要である。 本研究は、エピジェネティクスの破綻が原因となっているATR-X症候群以外の疾患群(Rett症候群、ICF症候群、Angelman症候群、Prader-Willi症候群、Sotos症候群など)や腫瘍の病態解明にも応用出来ることが期待される。
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