2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19590339
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 貴 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 教授 (10261629)
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Keywords | Androgen / Aromatase / Breast Cancer |
Research Abstract |
本研究課題に関する、平成20年度の主な研究成果は下記の如くである。 1. アロマターゼ阻害剤術前投与患者における乳癌組織中アンドロゲン濃度の解析。アロマターゼ阻害剤を術前に投与された乳癌組織に関し、エストロゲン及びアンドロゲン濃度をLC-MS/MS法にて測定し、性ホルモン合成酵素発現と合わせて解析した。その結果、アロマターゼを阻害することで乳癌組織中アンドロゲン濃度が増加することや、エストロゲン代謝酵素である17βHSD2の発現が亢進していること等が明らかになった。 2. 乳癌細胞におけるアンドロゲン応答遺伝子の同定。乳癌培養細胞にアンドロゲンを添加後マイクロアレイを施行し、610個のアンドロゲン応答遺伝子を同定した。またアロマターゼ阻害剤療法が行なわれている乳癌患者の乳癌組織を用いてマイクロアレイを施行した。その結果、培養細胞より同定したアンドロゲン応答遺伝子610個中194個(32%)の発現が亢進していた。従って、これらの遺伝子は乳癌において普遍性の高いアンドロゲン応答遺伝子であると考えられた。その中には結果1に記載した17βHSD2が含まれていた。そこで乳癌細胞における17βHSD2の発現制御を精査したところ、アンドロゲンがアンドロゲン受容体を介して直接誘導する一次応答遺伝子であることが明らかになった。 以上の実験結果より、アンドロゲンによる乳癌細胞増殖抑制作用の一部は17βHSD2の発現誘導によってもたらされる可能性が新たに推察された。これは乳癌におけるアンドロゲン作用を理解する上できわめて重要な知見と考えられるので、平成21年度はその機序や意義に関し、更に詳細に解析を進める予定である。
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