2008 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子GATAのエピジェネティックな異常と胃がんの臨床病理学的諸性状との関連
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19590340
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
秋山 好光 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (80262187)
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Keywords | GATA4 / GATA5 / メチル化 / 胃がん / メチル化特異的PCR |
Research Abstract |
発生・分化に関与する転写因子GATAは現在までに6種類が単離されており、それらはGATA結合配列(WGATAR)をプロモーター領域にもつ様々な遺伝子に結合し、その遺伝子発現を制御している。これまでの研究で、我々は消化管がんや卵巣がん細胞においてGATA4とGATA5のメチル化異常によるGATA4/5の遺伝子発現の低下を報告した。本研究では、胃がんにおけるGATA4/5のメチル化および機能的役割について解析した。胃がん組織77例を用いて、GATA4/5のプロモーター領域のメチル化異常の有無をメチル化特異的PCR法で解析した結果、GATA5のメチル化頻度(30例、39%)はGATA4(10例、13%)よりも有意に高かった(P=0.0002)。一方、GATA5は早期がん(11/28)、進行がん(19/49)ともに約40%がメチル化陽性であり、GATA5はGATA4(早期がん:0/28)よりもがん化の早期の段階から起こっていることがわかった。GATAの機能を明らかにするため、GATA4/5の発現ベクター(GATA4/pcDNA3,GATA5/pcDNA)を作製し、GATA4/5発現陰性の胃がん細胞株MKN74に導入した。WST-8およびG418を用いたcolony formation解析の結果、GATA4/5強制発現により有意に細胞増殖が低下した。次に、アデノウイルス発現ベクターを用いてMKN74またはKATAO-III(GATA5陰性)にGATA4/5をそれぞれ強制発現させ、発現変化した遺伝子をマイクロアレイで検索した。その結果、約150個の遺伝子がGATA4またはGATA5によって3倍以上発現亢進した。この中には、既知のGATA5標的遺伝子の一つで、がん抑制的な機能を持つtrefoil factor-1 や disabled-2遺伝子が存在していた。またMKN74細胞株におけるGATA4とGATA5の標的遺伝子は似ていた。以上より、GATA4/5のメチル化による発現消失は胃がんの発症において重要と考えられた。
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