2009 Fiscal Year Annual Research Report
唾液腺多形腺腫の悪性化における多段階発癌機序の分子病理学的解明
Project/Area Number |
19590367
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
長尾 俊孝 Tokyo Medical University, 医学部, 教授 (90276709)
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Keywords | 唾液腺 / 癌 / 病理学 / 発癌機構 / 悪性化 / 遺伝子 |
Research Abstract |
多形腺腫は、唾液腺腫瘍の中で最も発生頻度の高い良性腫瘍である。近年、この腫瘍では染色体相互転座が高率に起き、それによってPLAG1遺伝子の増幅をきたすことが報告され、注目を集めている。一方、臨床病理学的に多形腺腫の約6%に当たる症例が悪性化することが知られており、そのような症例を多形腺腫由来癌と呼ぶ。本研究では、多形腺腫の悪性化における発癌機序の解明を目的に、組織標本を用いた形態学的・免疫組織化学的・分子病理学的解析を行っている。まず、多形腺腫由来癌症例の標本を組織学的に検討した結果、悪性成分の組織型の頻度は、唾液腺導管癌が最も高く、その他、腺癌NOS、筋上皮癌、未分化癌の順であった。さらに、多形腺腫と癌腫との境界部分では、癌細胞が多形腺腫の導管構造部分を置換するようにして増殖していた。筋上皮マーカーを用いた免疫組織化学的検討によって、癌細胞で置換された多形腺腫内の導管構造部は、腫瘍性筋上皮細胞によって縁どられていることがわかった。これらの結果から、癌細胞は多形腺腫の導管上皮細胞から発生したであろうことが示唆された。また、免疫組織化学的に、悪性成分は有意にKi-67陽性率が高く、悪性成分にのみp53とHER2/neuがびまん性に陽性であった。つぎに、多形腺腫由来癌25症例からDNAを抽出し、H-,K-,N-ras遺伝子のcodon12,13および61の点突然変異の有無を検索したが、いずれの症例においても異常を見出し得なかった。今後、幅広く免疫組織化学的な癌抑制遺伝子産物、癌遺伝子産物、細胞周期関連蛋白、増殖因子、細胞接着分子、およびホルモンレセプターの発現様式に加えて、ISH法を用いたPLAG1遺伝子発現やFISH法による染色体相互転座の検索も引き続き行う必要がある。本研究内容は唾液腺癌の診断や遺伝子治療の基礎的データとして必要不可欠なものになると考えられる。
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