2008 Fiscal Year Annual Research Report
成熟型切断と分泌型産生による接着分子SgIGSF/TSLC1の機能制御
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19590391
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 彰彦 The University of Tokyo, 医科学研究所, 准教授 (80273647)
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Keywords | 免疫グロブリンスーパーファミリー / マスト細胞接着分子 / 肺癌抑制因子 / シナプス誘導接着分子 / Nectin-like molecule-2 / Shedding / スプライシング / 神経ガイダンス |
Research Abstract |
[緒言]SgIGSF(spermatogenic immunoglobulin superfamily)/TSLC1(tumor suppressor in lung cancer-1)は、免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する細胞膜1回貫通型の接着分子である。本分子は、精子形成に必須で、神経シナプス形成誘導能や肺癌抑制機能を有する。一方、マスト細胞の接着分子でもあり、線維芽細胞や神経との接着を媒介することでマスト細胞の生存や活性化に寄与する。このようにSgIGSF/TSLC1は多機能性接着分子であるが、その分子機序は全く不明であった。[目的]本研究課題ではSgIGSF/TSLC1の多機能性の分子的背景として本分子の蛋白レベル及び転写レベルでの修飾に注目して以下の解析を行った。(1)SgIGSF/TSLC1成熟型分子が細胞外領域において酵素的切断(shedding)を受けており、その結果細胞外断片が細胞外に放出されているかどうか、(2)sheddingによって放出される細胞外断片とよく似た構造を有すると考えられるスプライシング・アイソフォーム分泌型分子が成熟型分子によって媒介される細胞接着にどのような作用を有するのか。[結果](1)SgIGSF/TSLC1は細胞外領域の傍膜貫通領域に13個スレオニンが連続する部分があり、この部位で高度にO型糖鎖修飾を受けていると考えられている。SgIGSF/TSLC1はこのスレオニン繰り返し配列のすぐN末側とC末側の2か所でsheddingを受けていることが判明した。 sheddingの結果細胞外に放出される細胞外断片は2種類あり、両者はO型糖鎖修飾の有無の点で構造的に異なり、小さい方の分子は分泌型アイソフォームとほぼ相同の構造を有すると考えられた。(2)マウス上頸神経節細胞をI型コラーゲン内で神経成長因子の存在下に培養すると、神経突起は移植部位を中心に放射状に伸長した。培養開始後2日目にSgIGSF/TSLC1分泌型分子を恒常的に分泌するトランスフェクタントとその元の細胞を神経の近傍で対称的な位置に移植した所、6日目には神経突起の伸長がトランスフェクタントの方向へ曲がっているのが観察された。この3次元培養系を免疫組織化学的に検討すると、SgIGSF/TSLC1分泌型分子はトランスフェクタントの周囲に濃度勾配を成して分布し、その一部は神経突起表面に発現するSgIGSF/TSLC1膜貫通型分子と結合していた。以上の結果より、SgIGSF/TSLC1分泌型分子は神経突起細胞膜に発現するSgIGSF/TSLC1膜貫通型分子と結合することで神経突起伸長に対するアトラクティブなガイダンス能を持つものと考えられた。
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Research Products
(5 results)