2008 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺癌の骨転移巣形成を促進するTGFβをMMP13が活性化するメカニズムの解明
Project/Area Number |
19590400
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
二口 充 Nagoya City University, 大学院・医学研究科, 准教授 (60275120)
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Keywords | 前立腺癌 / 骨転移 / TGF-beta / MMP13 / 骨微小環境 / 腫瘍・間質相互作用 / プロテアーゼ / 骨芽細胞 |
Research Abstract |
前立腺癌の骨転移巣では、腫瘍細胞と宿主の間質細胞である骨芽・破骨細胞が相互作用し骨転移巣が形成される。一方、MMPは腫瘍・間質相互作用で重要な役割を果たすことが知られている。本研究では、どのMMPがどのように骨微小環境での腫瘍間質相互作用に働くかを検討した。我々の開発した動物モデルを用い、ラット前立腺癌が溶骨・造骨性変化を伴い増殖する組織像が観察される骨浸潤先進部と対照として非浸潤部からRNAを抽出し、microarray解析した結果、浸潤先進部ではMMP7とMMP13が高発現していた。免疫染色の結果、MMP7は破骨細胞に陽性であり、MMP13は骨芽細胞に陽性であった。MMP7は、RANKLを切断して可溶型RANKLを生成し、これが破骨細胞を誘導・活性化した。さらにMMP7ノックアウトマウスを用いた実験により、MMP7の作用を減少させると可溶型RANKLの生成が抑制され、破骨細胞の誘導が減少し、溶骨性変化が有意に抑制された。一方、MMP13を抑制するONO4817をラットに経口投与したところ、骨浸潤先進部における活性型TGFβの濃度が減少し、破骨細胞の誘導と溶骨性変化の抑制が観察された。以上より、前立腺癌が増殖する骨微小環境では、破骨細胞由来のMMP7は骨芽細胞のRANKLを可溶型にすることで溶骨性変化を促進すること、骨芽細胞由来のMMP13は骨基質から放出されたTGFβを潜在型から活性型へと変換し、前立腺癌や破骨細胞にTGFβのシグナルが伝達された結果、前立腺癌の骨転移巣が進展することが明らかとなった。 このように、骨微小環境における腫瘍・間質相互作用においてMMP7とMMP13が重要な役割を果たしていることが明らかとなり、MMP7およびMMP13は前立腺癌骨転移の治療標的分子となり得ることが示唆された。
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