2008 Fiscal Year Annual Research Report
シンテニック遺伝子トラップ法によるヒト肺がんホモ欠失領域中のがん抑制RNAの探索
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19590416
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
安田 純 The Institute of Physical and Chemical Research, RNA機能研究チーム, チームリーダー (00281684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前野 恵美 独立行政法人理化学研究所, RNA機能研究チーム, 研究員 (20462731)
高橋 由香里 独立行政法人理化学研究所, RNA機能研究チーム, 特別研究員 (90469908)
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Keywords | 肺がん / miRNA / 染色体異常 / 細胞周期制御 |
Research Abstract |
がんでは染色体領域の欠失、増幅が高頻度に認められ、悪性形質発現に関連すると考えられている。我々はヒト肺がんで染色体異常を高頻度に認める領域に、進化的に高度に保存されている機能性RNAとしてmicroRNA(miRKA)であるmiR-107および-185を見出した。両miRNAはヒトの多くの臓器でユビキタスに発現を認め、正常肺組織でも高発現であったが、培養細胞においては発現低下が認められた。これらmiRNAの合成模倣体をH1299などのヒト肺がん培養細胞に導入したところ、増殖抑制効果を認めた。この効果は既知の肺がん抑制機能性RNAであるLet-7によるものとほぼ同等の効果であった。細胞増殖抑制は蛍光励起細胞分離法を用いて解析したところ、細胞周期のG1期での停止によるものであり、細胞自爆死によるものではないと考えられた。miRNAは標的のmRNAの3'非翻訳領域の標的配列を認識し、当該mRNAの分解を誘導して発現抑制することが主たる作用機序であるとされるため、マイクロアレイ解析によって下流の標的分子を明らかにすることを試みた。その結果、miR-107および185の下流で抑制を受ける遺伝子群は大きく異なり、細胞周期停止の分子機構はそれぞれ異なることが考えられた。特にmiR-107についてはサイクリン依存性キナーゼ6など複数の細胞周期制御にかかわると考えられる遺伝子が負に制御を受けていた。本研究は肺がん発がんにおいて、進化的に高度に保存されている機能性RNAが重要な役割を果たしている可能性を示唆した。
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