2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン修飾を制御する分子によるがんの発生及び進展機構の解明
Project/Area Number |
19590417
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
藤井 誠志 National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East, 臨床腫瘍病理部, 室長 (30314743)
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Keywords | ヒストン修飾 / がん |
Research Abstract |
多種多様ながんにおいて高発現しているヒストン修飾を制御する分子であるEnhancer of zeste homologue 2(EZH2)が、腫瘍抑制遺伝子などの細胞の恒常性を維持することのできる重要な遺伝子群の発現の抑制をもたらし、細胞の表現型を劇的に変化させることによって、がんの発生と進展を引き起こしていることを明らかにするのが本研究の目的である。EZH2が高発現しているがん細胞は細胞増殖能が高いことから、その背景にあるメカニズムとして細胞周期の制御に関連する遺伝子群の中でのEZH2の標的遺伝子の存在を探った。その結果、p21などの細胞周期制御遺伝子の転写因子であるRUNX3遺伝子がEZH2の標的遺伝子であることを見出した。EZH2が標的遺伝子の発現を抑制することによって、がん細胞の表現型への影響を与えるか否かについて検討を試みたところ、EZH2をノックダウンすることにより、RUNX3の発現が回復し、結果として細胞の増殖速度の低下を認めた。クロマチン免疫沈降法により、標的遺伝子であるRUNX3遺伝子の上流域にEZH2が結合することを確認し、EZH2の結合の有無によってヒストンのメチル化状態即ちヒストン修飾状態が変動してRUNX3の発現が変動することを示した。 EZH2は様々ながん種の細胞で高発現を示していることから、種々の環境下において様々な生存シグナルに依存してヒストン修飾蛋白の発現が上昇している可能性を考えた。シグナル伝達阻害薬で乳癌細胞株を処理すると、EZH2 mRNAの発現量は阻害薬処理前と比べると半分以下になるという結果を得た。即ち、生存シグナルの亢進によりEZH2の発現が上昇し、その結果、細胞周期を制御するRUNX3などの発現低下をもたらすことによって、がん細胞の増殖能の増加という細胞の表現型の変化に繋がると考えられる。
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Research Products
(2 results)