2007 Fiscal Year Annual Research Report
寄生性線虫ミトコンドリアのタンパク質合成系研究の新展開
Project/Area Number |
19590425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉成 茂夫 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 助教 (70253317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 洋一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90323568)
大槻 高史 岡山大学, 大学院・自然学研究科, 准教授 (80321735)
横堀 伸一 東京薬科大学, 生命科学科, 講師 (40291702)
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Keywords | 寄生性線虫 / ミトコンドリア / タンパク質合成系 / リボソーム / EF-Tu / EF-G |
Research Abstract |
タンパク質合成系に用いられる機能性RNAであるリボソームRNA(rRNA)と転移RNA(tRNA)は、従来、種を通じて保存性が高いと考えられていた。しかし、多細胞動物ミトコンドリア(mt)内のrRNA、tRNAは、種の間でその構造に大きな多様性があることが近年知られてきた。その中で、線形動物ミトコンドリアではミトコンドリアゲノムにコードされているrRNAとtRNAの鎖長は著しく短く、その二次構造も単純化している。我々は、この単純化とともに、核ゲノムにコードされたタンパク質因子が、RNAの機能を補うように進化してきていることを明らかにしてきた。本年度は、この研究を発展させるために以下のような研究を行なった。 1.mtペプチド伸長因子G(EF-G)の機能解析 EF-Gは、タンパク質合成の伸長過程に必須の因子である。従来、大腸菌の発現系による線虫EF-G組換えタンパク質の調製が試みられてきたが、活性型のタンパク質を得ることができなかった。そこで今年度は、発現に用いる大腸菌株および融合タンパク質の種類を検討した結果、線虫ゲノムに2種存在するEF-G遺伝子の産物を、可溶性タンパク質として調製することに成功した。また、そのうち一種が大腸菌の再構成系を用いたポリフェニルウリジル酸依存ポリフェニルアラニン合成反応において、大腸菌EF-Gと同じ機能を持つことを示した。また、線虫EF-Gは、哺乳類mt EF-Gと同様にフシジン酸に対する抵抗性を持つことを示した。これらの結果は、線虫mtタンパク質合成系の試験管内再構成、および2種存在する線虫mt EF-Gの機能の解明に大きく前進した。 2.mtリボソームの調製法の検討 線形動物mtリボソームは、我々のブタ回虫mtリボソームの解析から、既知のリボソームの中で最もタンパク質含有率の高いリボソームであることが示唆されている。しかし、そのタンパク質構成成分の詳細は明らかではない。そこで、我々は、タンパク質構成成分の解析に適した量と純度を満たすため、線虫を用いて、その条件検討を行なった。その結果、パーコール密度勾配遠心法により、より純度の高いミトコンドリアが調製できた。また、リボソームの調製をより簡便化するために、精製用のタグ配列を付加したリボソームタンパク質のcDNAを線虫に導入し、その発現を試みた。その結果、組換えたんぱく質は発現し、mtリボソームへの取り込みも観察されたが、タグを標的にした精製は成功しなかった。この結果は、線虫mtリボソームのアフィニティ精製には、タグの種類や精製法などに検討の余地があることを示している。 3.植物寄生性線虫のEF-Tuのクローニングの試み Enoplea綱線虫mtには、クローバーリーフ型tRNA、Dアーム欠失型tRNA、Tアーム欠失型tRNAを持つものの他に、クローバーリーフ型tRNAを持たないものが存在する。今年度は、後者に属する植物寄生性線虫のtotal RNAからEF-TuのcDNAクローニングを試みたが、目的の配列を得ることができなかった。この結果は、total RNAをさらに精製する必要があることを示唆している。
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