Research Abstract |
申請者等はこれまで,Nocardiaの中でも最も感染力が強いNocardiafarcinicaの全ゲノム解析結果を報告した。Nocardiaは菌種によって薬剤感受性が異なることから,ノカルジア症の効果的な治療には原因菌種の同定が必須であり,正確で迅速な新しい同定法の確立が臨床分野で求められている。現在,NocardiaはリボゾーマルRNAの遺伝子,すなわち16S-rRNA遺伝子の配列情報が用いられている。しかし,Nocardiaでは16SrRNAの塩基配列は86%-99%と言う極めて狭い範囲に60菌種が分布しており,それぞれの菌種は僅かな違いで区別される結果となっている。本研究は,申請者らが報告したN.farcinicaの全ゲノム解析情報及びこれまでの研究で得られたgyrB遺伝子について,解析を行った結果,72%-99%の範囲に分布することを新しく見いだしたことに基づいている。本研究では,その中で60菌種に特異的な400塩基以下の配列情報を探索して,より"解像度"の高い種の簡便で正確な分類が可能であることを明らかにした。また,ノカルジア症の中で最も問題となるN.farcinicaのPCRによる簡便で菌種に特異的な新しい診断法も開発できた。 GyrB遺伝子情報を基に,日本で主に臨床材料から分離される5-9種程度の菌種(N.farcinica,N.nova,N.brasiliensis,N.asteroides,N.asiatica,N.beijingensis,N.otitidiscaviarum,N.exalbida,N.cyriacigeorgica)が同定可能なシステムの作成が可能であることが明らかになった。新たに同じ病原放線菌で感染が増加傾向にある菌属のGordoniaについても,gyrBおよびsecA1遺伝子の解析が完了して,それらの情報に基づく新しい分類体系の確立を進めている。
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