2007 Fiscal Year Annual Research Report
ブドウ球菌エンテロトキシンによる嘔吐機構の病態生理学的解析
Project/Area Number |
19590444
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 央 Osaka University, 医学系研究科, 教授 (20142317)
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Keywords | 食中毒 / ブドウ球菌 / エンテロトキシン / 消化管蠕動運動 / 嘔吐運動 |
Research Abstract |
ブドウ球菌食中毒症は年間多数の患者が報告される重要な疾患であり、主症状が激しい嘔吐であるという特徴を持つにもかかわらず、その病態の解明はほとんど進んでいない。そこで、主としてBALB/cマウスを用いて嘔吐にともなう特徴的上部消化管運動と投与エンテロトキシン用量との定量関係の解析を行った。摘出した胃-十二指腸標本について、吸引電極を用いて消化管運動に伴う電気活動を消化管表面から記録すると、十二指腸からはCajarの間質細胞の活動による0.8Hzのゆっくりとした基礎波とその脱分極相に呼応したスパイクが記録された。ブドウ球菌エンテロトキシン1-10μgの投与によって、基礎波とスパイクともに振幅が低下し、2時間後にも回復しなかった。毒素投与による電気活動の振幅低下は毒素投与後1分程度で顕著になるが、用量依存性は観られなかった。更に、十二指腸内腔圧の上昇および高濃度グルコース投与に伴う十二指腸電気活動の抑制がブドウ球菌エンテロトキシンによって遷延することも見出した。現在までの結果では十二指腸電気活動の抑制延長が毒素の投与量によって大きく変化する結果は得られていないが、幽門部からの距離による電気活動の位相のずれを用いた定量の可能性について検討している。これら本年度に得られた結果を基に次年度以降には当初の計画どおりに、1)迷走神経活動のブドウ球菌エンテロトキシン催嘔吐作用における役割の解明、2)消化管神経叢の活動におよぼすブドウ球菌エンテロトキシンの解析、3)嘔吐運動とブドウ球菌エンテロトキシン作用をつなぐ伝達物質の同定、へと研究を進める予定である。
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