2007 Fiscal Year Annual Research Report
腸管出血性大腸菌による脂質ラフトを利用した免疫応答制御機構の解析
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19590445
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安倍 裕順 Osaka University, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (00379265)
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Keywords | 感染症 / 腸管出血性大腸菌 / 脂質ラフト |
Research Abstract |
III型分泌機構を通して宿主細胞に直接挿入されるエフェクター分子群は免疫応答の制御を行っているが、その詳細はまだ一部しか明らかになっていない。当該研究は腸管出血性大腸菌の感染成立時に宿主細胞膜上の脂質ラフトに埋め込まれるNleH蛋白質を中心に免疫応答制御の分子機構を明らかにすることと機能未知のエフェクター分子群の中から免疫応答に関与する分子を分離同定し、その機能の詳細を明らかにすることを目的としている。NleH蛋白質と相互作用する脂質ラフト内分子の分離同定を行う目的で、免疫沈降により共沈した試料の質量分析を試みたが、宿主細胞由来のタンパク質を同定することはできなかった。一方、腸管出血性大腸菌による免疫応答制御に関わることが報告されているシグナル伝達系に関わる因子(p38, ERK1/2, Akt)の活性制御に対するNleH欠損株、NleH大量発現株の影響を腸管上皮由来のCaco-2細胞を用いて検討した。いずれの因子についてもNleH欠損株感染による活性化の抑制、NleH大量発現株感染による活性化が認められた。一方、阻害剤を用いた実験からp38活性化阻害によってNleH大量発現による腸管上皮由来のCaco-2細胞におけるNF-kBの活性化およびIL-8産生の誘導が阻害された。この結果はNleHを介した免疫応答制御はp38の活性化制御を介して行われていることを強く示唆している。一方、腸管出血性大腸菌0157:H7の保持する39のエフェクター分子群の中から相同性の非常に高いものを除いた26種類のエフェクター分子群を選別し、FLAG融合遺伝子を大量発現を誘導できる株を構築した。現在、これらの分子群の大量発現による腸管上皮由来のCaco-2細胞およびマクロファージにおけるNF-kBの活性化および各種サイトカイン産生への影響について検討中である。網羅的な解析により免疫応答に関与するエフェクター分子種および多様な相互作用解明の手がかりが得られることが期待できる。
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