Research Abstract |
ウエルシュ菌のβ毒素が血液系細胞のいかなるシグナル伝達系を活性化して細胞障害活性を示すのかを検討した。まず,セルライン化された単球系,T細胞系,B細胞系の培養細胞,そして,好中球などを用いてβ毒素がこれら細胞に対して細胞毒性を示すかどうか検討した。その結果,本毒素は,単球系のU937とTHP-1細胞に対して最も低濃度で細胞毒性を示し,次に,HL-60細胞であった。これに対し,MOLT4細胞(T細胞系)やBall-1細胞(B細胞系)には作用が弱いが毒性を示し。一方,好中球に対しては作用を示さなかった。次に各細胞のラフトへの32PAラベル毒素の結合を比較すると,本毒素に感受性が強かったU937細胞とTHP-1細胞のラフトに本毒素のオリゴマーが強く結合し,他の細胞には毒素の感受性に従って低下した。そこで,本毒素に対して感受性が高いTHP-1細胞のシグナル伝達系に対する毒素の効果を検討した。その結果,本毒素をTHP-1細胞に作用させると,約1分で内因性ホスホリパーゼC(PLC)の活性化が認められ,5分後に最大となりその後,減少する一過性の活性化が認められた。本毒素による細胞毒性は内因性PLCの阻害剤であるU73122で阻害され,そのネガティブコントロールであるU73343では阻害されないことからβ毒素による内因性PLCの活性化が,毒素活性に強く関与している推察される。さらに,THP-1細胞を毒素処理するとMEKやERKのリン酸化が認められた。以上の結果から,β毒素は,THP-1細胞のシグナル伝達系に影響を与え,細胞障害作用を示すことが明らかとなった。
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