2008 Fiscal Year Annual Research Report
バイオインフォマティクスに基づくB型インフルエンザウイルス変異機序の基盤的解析
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19590482
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
信澤 枝里 Nagoya City University, 大学院・医学研究科, 准教授 (90183904)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 血球凝集素 / 変異許容性 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、B型インフルエンザウイルスHA(BHA)のアミノ酸変異に対する許容性をレセプター結合能を基準に検討し、以下の結果を得た。1.分岐前後BHA-KNG73HA(分岐前),YAMAI99HA(分岐後Yamagta系統),VicAI99HA(分岐後Victoria系統))のHA1領域の変異に対する許容性は最終的に、それぞれ62,68,64%となり、既に報告されているA型ウイルスHAの約1.5倍であった。2.抗原的、遺伝的に異なる二分岐系統上の同一部位におけるアミノ酸変異の影響は、96%の変異で一致していた。これは各系統上の変異の蓄積が、その後の変異の影響を変えることは少ないことを示している。この点、A型HAでは影響が一致するのは約75%で、変異の蓄積の影響が大きい。3.HA1頭部の4抗原領域内に生じた変異の大半は許容変異で、非許容変異は分子内部に存在するなど構造的に制約された部位であった。一方、野外分離株に生じた抗原領域内の変異部位のうち90%が両系統間で一致しており、分岐後も抗原性に関与する部位に大きな差はないことが示された。4.BHAのレセプター特異性に関しては詳細な報告はないが、本研究の結果、ニワトリ血球、ヒト血球への結合能が異なる変異が見つかった。両血球上の糖鎖構造解析の結果、2-3シアル酸、2-6シアル酸の違いのみならず、シアリル糖鎖の長さ、量、配列に大きな違いがあり、上記変異がこの差の認識に影響したと考えられる。5.上記変異HAの一部を有するウイルスを作製したところ、その増殖能は変異許容性をほぼ反映していた。BHAの結晶構造は2007年に決定されAHAの構造に類似している。しかし、本研究の結果、進化の過程でHA蛋白質上に蓄積されるアミノ酸変異の影響は、BHAではAHAに比べ少ない。両HAの構造を比較するとBHAの方がAHAに比べ余裕があり、それがアミノ酸変異の蓄積による構造的ひずみを吸収し、アミノ酸変異に対する許容性の高さとして現れていることが示唆された。
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