2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19590500
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
桂 義元 Nihon University, 医学部, 兼任講師 (90027095)
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Keywords | T細胞 / 分化 / 造血幹細胞 |
Research Abstract |
T細胞は胸腺の中でT前駆細胞から作られる。そのT前駆細胞は造血幹細胞(HSC)から作られる。系列決定の過程に関しては、古典的には、HSCからT/B系列に共通の前駆細胞(CLP)が作られ、T前駆細胞はこのCLPに由来するという考え方があった。これに対して我々が胎仔肝臓における造血において既に明らかにしている事は、HSCからミエロイド(M),T,B系列を作るM/T/B前駆細胞を経て、M/T前駆細胞が作られ、T前駆細胞はこのM/T前駆細胞に由来するという事である。これは古典モデルとは全く異なる。一方、アメリカのWeissmanグループは、成獣を用いた実験をもとに、古典モデルが正しいという報告を行なっていた。 本研究は、既に凍結保存してある成獣マウス骨髄細胞を用いて成獣でも我々の考え方(ミエロイド基本形モデル)が正しい事を示す事を目的として行なった。本研究によって、正常マウスの骨髄中にも、γ線(8.5Gy)照射して骨髄移植を行なったマウスの脾臓中にも、多数のT前駆細胞が存在する事がコンピューターを用いた解析により明らかとなった。そのT前駆細胞は、γ線照射マウスに静注すると胸腺へ移行する事が知られている。しかし、成獣マウスへ静注して胸腺へ移行するという確証はまだ得られていない。この正常マウスへの移入実験は成獣動物の実験では難しく、これがネックとなる事が多いのである。一方、成獣においても「T前駆細胞はCLPに由来するものではない」という結果は、胸腺内T前駆細胞の詳しい解析から得られた。胸腺内の最も初期のT前駆細胞を1個ずつ培養して、その分化能を調べた結果、このT前駆細胞のうち数%はマクロファージへの分化能を保有していることが示された。この論文はNatureに採用され、ミエロイド基本モデルが造血のプロセスを正しく説明できるものとして広く認められるようになりつつある。
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