Research Abstract |
播種性血管内凝固症候群(DIC)において,血管作動性物質は循環動態や凝固と炎症のクロストークに影響を与える可能性が高いが,従来ほとんど検討されてこなかった。今回,DICモデルを,LPSまたは組織因子(TF)で誘発して作成し,血管拡張性物質である-酸化窒素(NO)や血管収縮性物質であるエンドセリン(ET)の動態を検討した。その結果,LPSモデル(臓器障害は高度)においては,血中ETは著増し,血中NOX(NO代謝産物)も中等度上昇した。このNOXの上昇は,特異的iNOS阻害薬であるL-NILにより有意に抑制された。一方,TFモデル(臓器障害は軽度)においては,血中ETは上昇しなかったが,血中NOXは著増した。TFモデルに対して,抗トロンビン薬であるアルガトロバンまたは抗Xa薬を投与したところ,血中Noxの上昇は著しく抑制された。また,特異的iNOS阻害薬であるL-NILを投与しても,血中NOXの動態に影響を与えなかったが,eNOS阻害薬であるL-NAMEを投与したところ血中NOXの上昇は有意に抑制された。以上の結果より,LPSモデルにおいてはiNOSがNO産生の中心的役割を演じ,TFモデルにおいてはeNOSがNO産生の中心的役割(トロンビンが刺激物質)を果たしているものと考えられた。また,LPSモデルにおけるiNOSは臓器障害を助長し,TFモデルにおけるeNOSは臓器保護的に作用しているものと考えられた。DICにおける臓器障害進展の原因としては,従来から指摘されてきた微小血栓の多発に伴う微小循環障害のみならず,血管作動性物質の果たす役割も大きいものと考えられた。平成20年度は,凝固活性化および血管作動性物質発現を同時に制御するような治療法についての検討を行う。
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