2008 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性腎症モデルマウスにおける慢性低酸素関連性の新規進行因子の研究
Project/Area Number |
19590550
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
吉田 治義 University of Fukui, 医学部, 教授 (80135574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 秀樹 福井大学, 医学部, 准教授 (20283187)
高橋 直生 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (30377460)
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Keywords | 糖尿病性腎症 / db / dbマウス / 慢性低酸素 / 糸球体硬化 / メサンギオリーシス / 結節性硬化 / 微小血管瘤 / 高血糖 |
Research Abstract |
我々は昨年度の本研究で正常気圧性低酸素発生ケージを作成し、数ヶ月間低酸素(11%02濃度)でマウスの飼育が可能な環境を用意した。今年度は、糖尿病性腎症自然発症性db/db雄マウスを予備実験を含めて合計40匹を用いた。8週齢から正常酸素下で飼育し24週齢で堵殺した群(A群)、8週齢から11%02濃度下で飼育し、24週齢で堵殺した群(B群)および、8週齢から20週齢まで11%02濃度下で飼育し、以後正常酸素下で維持し24週齢で堵殺した群(C群)について腎組織所見を比較検討した。体重は20週齢で正常酸素下に比して低酸素環境下では最大値で約15%少ない傾向があったが、堵殺時には各群とも同様であった。堵殺時のヘマトクリット値は正常酸素下での55-60%に比して低酸素下では約70-80%と高値であった。随時血糖値は正常酸素下では400-500mg/dlであり、低酸素下では100から250mg/dlと有意に低下していた。腎の組織学的検討では、A群では糸球体メサンジウムを中心としたび慢性硬化が中等度に進行した像が見られた。一部では高度の硬化像も見られた。B群では糸球体はび慢性に腫大し、著明な毛細血管の微小血管瘤の形成が目立ち鬱血を伴っていた。メサンジウム硬化が種々の程度にみられ、一部では血管瘤の管腔内への硬化病変の進展が認められた。C群では、糸球体の微小血管瘤は目立たず、糸球体の不規則な腫大と進行したび慢性硬化所見が認められた。また、微小血管瘤から結節性硬化を来たしたと思える糸球体も散見された。尿細管間質にはいずれの群でもヒト本症で認めるような明らかな変性・硬化像は認めなかった。 以上から、ヒト糖尿病性腎症で特徴的に認められる進行した糸球体硬化病変が慢性低酸素環境下で再現できたと考えられる。その機序には、低酸素惹起性の血管内皮からメサンジウムの障害により形成されたメサンギオリーシスに、高血糖刺激によるメサンジウム基質の蓄積が合併することにより多様な硬化性病変を招来したものと考えられる。現在、分子病理学的解析を進めているところである。
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Research Products
(5 results)