2008 Fiscal Year Annual Research Report
血栓症リスクファクター・先天性/後天性プロテインS欠乏症発症の分子基盤解明
Project/Area Number |
19590553
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小嶋 哲人 Nagoya University, 医学部, 教授 (40161913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 正 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30314008)
高木 明 名古屋大学, 医学部, 助教 (30135371)
山本 晃士 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90362251)
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Keywords | プロテインS(PS)欠損症 / PROS1遺伝子 / 遺伝子欠失 / プロモーター / ルシフェラーゼ・レポーター解析 / HepG2細胞 / エストラディオール(E2) / PS mRNA |
Research Abstract |
先天性プロテインS(PS)欠損症は血栓性素因として日本人に頻度が高く、我々も数多くのPROS1遺伝子異常を同定してきたが世界的にみて約半数は遺伝子異常の同定に至っていない。また、妊娠や重症感染症での後天的PS欠損症も血栓症リスクであるが、その発症分子機構も十分には解明されていない。本研究は、PS欠損症発症の遺伝的要因であるPROS1遺伝子異常(遺伝子欠失など)の同定とともに、後天的要因である性ホルモンや全身性炎症反応によるPS発現低下機構の解明を行い、PS欠乏にともなう血栓症発症予防や治療法開発の理論的基盤を明らかにすることを目的とする。ヒトPSを産生するHepG2細胞を用い、ERα共発現下においけるエストラディオール(E2)の添加による培養上清中のPS分泌量の変動についてELISA解析を行ったところ、30%の発現低下を認めた。また、細胞内PS mRNAの変動についてReal Time PCRを用いて定量した結果、同様にE2の添加によるmRNA発現低下を認めた。ルシフェラーゼレポーター解析では、E2によりPROS1プロモーター活性は50%〜60%までの低下がみられ、-172と-163に存在する2つの隣接するGC-rich motifのうち、上流側のGC-rich(-172から-163)がE2による抑制に必要であることが判明した。さらにEMSAおよびDNA pull-down assay、ChIP assayを行った結果、2つのGC-rich motifを含む領域にはSp1およびSp3に加え、ERαが結合することが示された。これらの結果より、E2によるPS発現の抑制はPROS1プロモーター領域へのERα/Sp蛋白の結合に起因することが明らかとなり、妊娠女性においてはE2濃度の上昇が血中PS量の低下を導き、静脈血栓塞栓症のリスクとなることが示唆された。
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