2008 Fiscal Year Annual Research Report
繊維・粒子状物質による呼吸器疾患のニトロ化DNA損傷を指標としたリスク評価
Project/Area Number |
19590585
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平工 雄介 Mie University, 大学院・医学系研究科, 講師 (30324510)
|
Keywords | 繊維・粒子状物質 / アスベスト / リスク評価 / 発がん / 慢性炎症 / 活性酸素・窒素種 / DNA損傷 / 8-ニトログアニン |
Research Abstract |
アスベストによる中皮腫や肺がんに代表されるように、繊維・粒子状物質による健康障害は重大な社会問題である。したがって、発がんなどの呼吸器疾患のリスク評価法の開発が急務である。繊維・粒子状物質による発がんなどの呼吸器疾患には慢性炎症が重要な役割を果たすと考えられる。8-ニトログアニンとは、炎症条件下で生成される変異誘発性ニトロ化DNA損傷塩基である。研究代表者らは、種々の臨床検体や動物モデルで8-ニトログアニンが炎症関連発がんの過程で生成されることを世界に先駆けて明らかにしてきた。本年度は、アスベストを気管内投与したマウスの気道上皮細胞で8-ニトログアニン生成を認め、その過程には転写因子NF-kBの活性化を介したiNOSの発現誘導が関与することを免疫組織学的手法などにより明らかにした。また発がん性の強いクロシドライトの方がクリソタイルより低用量で有意に強く上記蛋白の発現およびDNA損傷を起こすことを解明し、アスベストの発がん性と一致するという極めて注目すべき知見を得た(論文投稿中)。さらに炎症関連発がんに関しては、中国東南部のEBウイルス感染患者で、8-ニトログアニン生成が咽頭炎から上咽頭癌に至る過程で有意に強くなることを明らかにした(Int. J. Cancer 2008)。タイ肝吸虫感染ハムスターにおける肝内胆管細胞のDNA損傷は抗酸化剤クルクミンにより抑制され、発がん予防に有効である可能性を示した(Mol. Nutr. Food Res. in press)。以上の結果から、8-ニトログアニンはがんの発生部位に特異的に生成され、その強さは慢性炎症からがんの発生・進展に至る過程および環境因子の発がん性の強さを反映する点が極めて意義深い。したがって、8-ニトログアニンは炎症関連発がんリスクを評価する新規バイオマーカーとして期待される。
|