Research Abstract |
ポピュレーション・アプローチについて,国内外の文献及び地域保健従事者へのインタビューによる具体的な事例の収集を行い,概念整理及び分類を行った。文献的には,Blackburn(1984)によるものが最も古く,疫学的にその意義が検討されている。次いで,Rose(1985)が公衆衛生的意義も含めて整理を行った。具体的な事例としては,Puskaら(1983)によるフィンランドでの循環器疾患対策のために地域介入を行ったNorth Karelia project,Naderら(1999)による米国カリフォルニア州での学校単位の介入研究等がある。国内では、Tanakaら(2006)による職域に対する介入研究の報告がある。また,栃木県小山市では健康増進計画を機に保健推進員が種々の地域活動を展開している。東京都荒川区では,健康応援店の認証によりヘルシーメニューの普及を行っている。岡山市中央保健センター愛育委員会では,喫煙に対する地域の規範を変化させることに取り組んでいる。神奈川県秦野市では,地域包括支援センターが介護予防サポーター養成講座等により地域全体のヘルスプロモーションに取り組んでいる。埼玉県坂戸市鶴舞自治会では,防災活動を軸に健康な町づくりを目指した活動を展開している。概念整理の結果,ポピュレーション・アプローチとハイリスク・アプローチは指向性の概念であり,個々の事業を明確に2分することはできないと考えられた。具体的なポピュレーション・アプローチの方法として,社会的環境整備(法律、条例による規制,経済誘導,理念規定,仕組みづくり),物理的環境整備(人工環境,自然環境,冷蔵庫や歩数計等の身の回りの物の整備),情報提供(キャンペーン,連携による啓発等)に分類できると考えられた。本研究は,市町村等における生活習慣病対策の推進に指針を与えるものであると考えられる。
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