2009 Fiscal Year Annual Research Report
家系内遺伝子検索による先天性銅代謝異常症(ウイルソン病)の予防医学的研究
Project/Area Number |
19590658
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
中山 憲司 Hokkaido Institute of Public Health, 健康科学部, 研究主査 (30442594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 芳伸 北海道立衛生研究所, 感染症センター生物科学部, 主任研究員 (00414326)
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Keywords | ウイルソン病 / 銅代謝異常症 / ATP7B / 遺伝子診断 / プロテオーム解析 / 予防医学 / 臨床検査 |
Research Abstract |
ウイルソン病(WND)は、常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性の銅(Cu)代謝異常疾患である。日常生活において摂取されるCuが、正常に肝臓から胆汁中に排泄されず、肝臓・脳・腎臓・角膜などに多量に蓄積し、重度の障害を起こすと考えられている。多量に蓄積したCuにより、小児期に重い肝障害や中枢神経障害を呈する。WNDでは、第13番染色体に位置するATP7Bと呼ばれるCuの細胞内輸送を担う膜蛋白質(トランスポーター)の遺伝子に異常が認められる。その遺伝子異常によって、Cuトランスポーターの機能が障害され、肝細胞内から胆汁中への正常なCuの排泄が阻害され、肝臓や脳に多量のCuが蓄積すると考えられている。近年、その発生頻度に関して、サルデニア島(イタリア)、中国、そして日本では他の地域よりも高く1万人に1人であるとの報告がなされた。1993年のATP7B遺伝子の発見以来、現在までに報告された病因変異は300種を越え、ATP7B遺伝子全領域に分散し、その様相も極めて多様なために、変異遺伝子型と病態との関連性に関する研究はほとんど進展していない。本研究では、WNDの患者を有する家系において、病因遺伝子の家系内検索を実施し発症前患者の早期発見を試みた。本研究でのWND遺伝子検索に関する問い合わせ頻度は、2~3週間(道内は3~4ヶ月)に1回であった。この問い合わせ件数の多さは、Coxらが報告したように、本邦が1万人に1人以上の発症頻度を有する世界3大発症地域の1地域であることを支持するものと考えられた。また、遺伝子解析依頼者の対象年齢も、1歳6ヶ月から52歳までと幅広く、本疾患の発症や診断は小児期に限定されたものではないことが改めて確認された。家系内遺伝子検索を実施する事により、発症前WND患者を発見することが可能なばかりでなく、同胞例のWND疑いを否定することも重要な情報源となることが明らかとなった。また、WNDのモデル動物を用いた基礎的研究では、ゲノミクス及びプロテオーム解析を用いて、新しいWND簡易診断法の開発に向けた予備的知見を得ることが出来、現在、論文を投稿中である。
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Research Products
(4 results)