Research Abstract |
平成19年度は,群馬県草津町,新潟県長岡市与板地区で実施された健康調査と老人医療費・介護費用をリンクしたデータセットを活用し,要介護リスクが高齢者の将来の医療費・介護費用に及ぼす影響を分析した。また,先駆的な高齢者施策(介護予防施策)の評価も行った。 (1)データセットの整備 群馬県草津町において毎年実施されている介護予防健診(65歳以上対象)にこれまで同様,現地で町と協力し,その実施にあたった。健診には612人が参加し,その健康情報をデータセットに追加した。さらに健診を受診しなかった70歳以上の住民を対象とした健康調査(郵送調査+訪問調査)を実施し,763人から回答を得た(回収率97.4%)。このデータもデータセットに追加入力した。 (2)高齢者保健事業の経済的評価 草津町の介護予防健診の経済的評価を行った。平成18〜19年度の介護予防健診を継続受診する群と両健診とも受診しない群の約1年半の1人あたり累積医療費,累積介護費用は,継続受診する群が非受診群に比較して,健康度を調整しても,それぞれ有意に低かった。 (3)介護予防事業の医療経済的根拠 虚弱性チェックリストによって定義された「虚弱」の総死亡および医療・介護費用へのインパクトを調べた。群馬県草津町において平成13年10月から11月にかけて実施した高齢者健康調査に応答のあった916人を約4年間追跡し,追跡期間中の総死亡および老人医療費,介護費用を調べた。虚弱と総死亡との間には,性,年齢を調整しても強い関連性が認められた。また,追跡期間中(平成14年度〜17年度)の1人あたり平均累積総給付費は,虚弱群では469万円,虚弱なし群では188万円であった。地域在宅高齢者における「虚弱」は,性,年齢(および総合的移動能力)による影響を除いても総死亡の独立したリスク要因であった。また,老人医療費のみならずのちの介護費用の増大にも寄与しており,医療経済的インパクトも大きい病態と考えられた。
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