Research Abstract |
平成20年度は,主に群馬県草津町で実施された介護予防健診から得られた高齢者の健康情報と老人医療費・介護費用をリンクしたデータセットを活用し,先駆的な高齢者保健事業(介護予防健診)の経済的評価を行った。 (1)高齢者保健事業の経済的評価 草津町の介護予防健診の経済的評価を行った。分析対象者を,2002年から毎年実施されている介護予防健診「にっこり健診」の2005年までの受診回数(毎年受診していれば4回)により2群(受診回数3回以上の群と3回未満の群)に分け,その2群間でアウトカム(要介護発生までの期間,追跡期間中の累積介護費用)を比較した。健診受診回数が少ない群と要介護の発生との間には,潜在的な交絡要因(共変量)を調整しても強い関連性が認められ,統計学的に有意であった。また,追跡期間中の1人あたり平均累積介護費用は,健診受診回数が多い群では14,000円,少ない群では約10倍の148,000円であった。 (2)高齢者の歩行速度の総死亡と医療費・介護費用に及ぼす影響 2002年6月に70歳以上の草津町全住民を対象に実施された介護予防健診の受診者で,2005年10月26日現在,転出者を除き,生存及び死亡が確認できた422人を2002年6月から2005年10月まで追跡し,追跡期間中の総死亡と累積医療費・介護費用を調べた。歩行速度(m/分)下位群と総死亡との間には,潜在的な交絡要因(共変量)を調整しても強い関連性が認められ,統計学的に有意であった。また,追跡期間中の月1人あたり平均累積医療費は,歩行速度上位群で24,000円,中位群で29,000円,下位群で37,000円であり,同月1人あたり平均累積介護費用は順に500円,2000円,17,000円であった。死亡者の最も多かった歩行速度下位群の追跡期間中の月1人あたり平均累積医療費が,他群と比較して最も高かったのは,死亡後に計上されない費用よりも終末期医療費などが高額であったものと考えられた。
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