Research Abstract |
平成19年度は個人識別を目的としたsingle nucleotide polymorphism(SNP)データベースの充実を図るため,新たなSNPマーカーを選択し,TaqMan法によるSNPタイピングを行った.最終的には血縁関係のない日本人100名分のDNA試料を用いて,常染色体上から計120座位のSNPマーカーを選択し,データベースを構築した.このデータベースの統計的な解析データは次のとおりである.120SNP各座位において,他人とSNPタイプが偶然に一致する確率である同値確率は,0.375〜0.465を示し,平均は0.383となった.また,ハーディ・ワインベルグ平衡成立の有無につきカイ二乗検定を行ったところ,p値が0.9997となり,今回の集団データは全体としてハーディ・ワインベルグ平衡を充たしているとの結果が得られた.さらに,各SNP座位間で相関があるか否か,3×3分割表を用いた独立性の検定を行ったところ,p値は0.016となり,各座位は全体としてお互いに独立であるとの結果が得られた.SNP間の独立性が確認されたことで120座位の総合同値確率を求めたところ,9.81×10^<51>となった.以上により,個人識別を目的とした100人,120SNPsのデータベースの有用性が示された.さらに,解析時間の短縮を目的として,TaqMan反応におけるサイクル数の減少,および反応時間の短縮といった検討を行ったところ,次のような結果が得られた.すなわち,サイクル数の減少は致命的であり,型の判定が不能となる座位がほとんどであった.一方反応時間の短縮では,判定不能となる座位は若干見られたものの,ほとんどの座位で問題とはならなかった.これは増幅領域が短ためだと思われる.このような座位を利用することにより,最終的には口腔内のスワブからSNPのタイピング結果を得るまでをトータル30分以内で行える解析システムを構築することができた.
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