Research Abstract |
平成20年度は常染色体上のSNPマーカーを増やし, データベースの充実を図った. さらに, Microsoft^R EXCELを用いた新たなスプレッドシートを作製し, 識別精度の向上を図った. データベースに関しては次のとおりである. 血縁関孫のない167人の日本人ボランティアから得られたDNAを試料とし, TaqMan SNP Genotyping Assays databaseから30座位の常染色体上SNPマーカーを新たに選択した. これまでのSNPsマーカーとは物理的距離が離れており, かつ遺伝子領域以外のSNPsを選択した. タイピングはFast TaqMan法を採用し, 95℃3秒, 62℃30秒のサイクルを40回行い, 総解析時間は約45分である. その結果, 各座位における同値確率は0.375〜0.407を示し, その平均は0.380であった. また, SNPs30座位の総合同値確率は2.39×10^<-13>と算出された.Arlequin software ver. 3. 1によるexact testでは, D2S364(rs7593254, p=0.023)以外でバーディ・ワインベルグの平衡が保たれていた. さらに, 同様のソフトを用いて連鎖不平衡検定を行ったところ, 同じ染色体上に存在するSNPs間の相関は見られず, 個人識別を目的としたSNPデータベースの充実を図ることができた. 識別精度の向上を図るためには, 解析するSNP座位の数を増やせばよい. しかし, ポジティブ, およびネガティブコントロールを必要とするため96穴のプレートでは一度に24座位の解析が限界となる. そこで, 毎回解析の度にコントロールを一緒に反応させるのではなく, 過去に採取したデータとの比較で未知試料のタイピングを行えば, 一度に最大96座位の解析が可能となる. そのためのソフトウェアであるMicrosoft^R EXCELを用いたスプレッドシートを作製した. その結果, 一度に最大96座位のSNP解析が可能となり, その際の同値確率は1.97×10^<-41>と算出された. これは世界で唯一のIDを作成できるほどの値はであるが, 目的に応じて常染色体上SNPsだけでなく, ミトコンドリアDNAやY染色体上のSNPsも同時に解析することができ, 個人識別のみならず, 母系の確認, 人種の推定などが短時間のうちに解析可能となった.
|