2007 Fiscal Year Annual Research Report
小児・配偶者・高齢者に対する虐待の法医病理学的証明に関する研究
Project/Area Number |
19590677
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小片 守 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10152373)
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Keywords | 社会医学 / 脳・神経 / 細胞・組織 / 特殊環境 / 損傷 / ミエロパーオキシダーゼ / 虐待 / 小児 |
Research Abstract |
1.Myeloperoxidase (MPO)をマーカーとした白血球動態の比較検討 広範な外傷及び続発した外傷性ショック・出血性ショックのマーカーとして注目されているMPOに対する抗体を用いた免疫組織化学によって,各臓器に浸潤した白血球数を明らかにすることを試みた。まず,65歳以上の高齢者の腎臓標本を用いて,200倍視野で左右60視野ずつ計120視野について糸球体内,間質内の染色陽性細胞数を数え,白血球浸潤の程度を検討した。外傷面積の広い例(体表面積の13%以上)5例では平均484(標準偏差104)個の染色陽性細胞を認め,外傷面積の狭い対照例(体表面積の10%以下)5例の平均233(標準偏差81)個に比して0.5%の有意水準で統計学的に有意の高値を示した。したがって,MPOをマーカーとして免疫染色標本を検討すれば,外傷が各臓器に及ぼす影響の程度が間接的に明らかになり,特に高齢者への身体的虐待の有無や程度を推定する補助的検査法になる可能性が示唆されたと考える。今後例数や検査臓器数を増やして検討を進めるとともに,児童虐待例についても検討したいと考える。 2.実際の解剖例における高齢者虐待の診断への応用 身体的・経済的虐待が原因で縊死自殺したことが疑われた高齢者の解剖例について,前記MPO免疫染色を用いて腎臓内(糸球体内,間質内)の白血球浸潤の程度を検討したところ,計379個の染色陽性細胞を検出した。本例には体表面積の約25%にわたる新旧混在する広範な皮下出血や表皮剥脱を認めたことに加え,MPO陽性細胞数が前記対照例の平均233個と比べて高値を示したことからも,生前高度の身体的虐待を被っていたことが推定された。
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Research Products
(4 results)