Research Abstract |
覚醒剤(MAP)の血中濃度は,投与後3,6hで水浸拘束(WRS)(-)に比べWRS(+)で有意に高値となりWRS下ではその代謝・排泄が遅れることが明らかであった。血中サイトカインではIL-10,TNFさらにIL-6がWRS(+)MAP群で有意な上昇を示し,とくにIL-6は顕著に増加した。一方,心筋組織障害の指標として血中のTroponin IおよびH-FABPを測定した結果,H-FABP濃度がWRS(+)MAP群において投与6hで有意に高値となるが,WRS(-)MAP群,WRSのみの群ではその上昇が認められず,ストレス下の心筋において組織障害が惹起されることが示唆された。つぎに,MAP投与3hでの心筋におけるHspの遺伝子発現を検討した。その結果,WRS(-)MAP投与群においてHsp70,90,32の発現レベルが高値を示すが,WRS(+)MAP群では大きな変化は観察されなかった。さらに心筋におけるHsp70タンパク量もWRS(-)MAP投与群において一般に高い値が得られた。以上,今回の研究では,MAPでの心筋に対する作用はWRSによって大きな影響を受けることが分かった。すなわち,WRS(-)MAP群の心筋では,防御機構としてのHspsの発現が促進されるが,WRS(+)MAP群では,サイトカインの発現が促進される反面,Hspsはとくに変化せず,これが心筋の組織障害に繋がっていくものと思われた。
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