2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19590686
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
北 敏郎 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 准教授 (00131912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敏子 産業医科大学, 医学部, 講師 (80141745)
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Keywords | Shock / Heatstroke / bacteria / translocation |
Research Abstract |
われわれは,法医実務への応用を目標に,ショック時に発生する諸臓器の器質的変化の診断学的位置づけおよびその発生メカニズムの解明を目指している。今回,異常高温環境下により発症する熱中症を対象とした。まず,熱中症動物モデルの作製について,ホットプレートを蓄熱装置として用い雄Wistarラット(10週齢)で検討した。具体的には,ウレタンクロラロース麻酔下で,42.0℃に設定したホットプレート上に背部を保定して140分間蓄熱させた。その結果,直腸温度は,蓄熱後漸次上昇し140分後には42.3±0.31℃となった。平均血圧は,蓄熱前85.2±3.9mmHgから蓄熱後80分では140.4±4.1mmHgへと徐々に上昇したが,その後急速に低下し140分後には23.6±6.3mmHgとなり死亡する個体があった。この方法で作製した動物を熱中症病態モデルとした。通常ショック状態に陥ると多臓器不全が発生することはよく知られており,その発生に大腸菌毒素が関与している可能性が報告されている。したがって,上記の熱中症病態モデルの肝臓,腎臓,心臓および肺を無菌的に取り出し,MacConkey培地で各臓器について腸内細菌の侵入(Bacterial Translocation:BT)の可能性を細菌学的に検査した。さらに,腸管粘膜バリア障害発生の有無をトレーサーとして西洋ワサビ、ペルオキシダーゼ(HRP)を腸管腔内に投与し検討した。その結果,細菌学的検査において,各臓器から大腸菌,モルガネラ,セラチアなどの腸内細菌類が観察された。トレーサー実験では,腸管粘膜バリアの破綻が生じていることが確認された。背部を保定したのみの対照群では,これらの変化は認められなかった。 今回,ラットを用いた熱中症病態モデルにおいて,BTが発生していると考えられた。今後,大腸菌毒素(LPS)の臓器障害発生への関与の可能性を検討する。
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