2008 Fiscal Year Annual Research Report
癌関連精神ストレスと腫瘍進展血管新生のバイオロジカルサイコオンコロジー研究
Project/Area Number |
19590688
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海老原 覚 Tohoku University, 病院, 助教 (90323013)
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Keywords | セロトニン / 癌 / セロトニントランスポータ / eNOS / セロトニン2B受容体 |
Research Abstract |
本年度は癌関連精神ストレスのうち抑鬱と癌とりわけ腫瘍進展様式の関係を研究した。そこで鬱の原因神経伝達物質であるセロトニンと癌の進展の関係を調べた。鬱のモデルであるセロトニントランスポーターノックアウトマウスに皮下腫瘍を植えるとその腫瘍内のセロトニン濃度は半減しており、腫瘍の増大は有意に抑えられた。また、腫瘍内のendothelial nitric oxide synthase (eNOS)の発現が抑えられていた。そこで血管内皮細胞(HUVEC)に生理的濃度以下のセロトニンを投与したところ、セロトニンの用量依存性にeNOSが誘導された。網羅的リン酸化酵素検出台にて、このときに誘導されるリン酸化酵素を調べたところ、ERK1/2の活性化がみられた。そこでin vitroにおいて調べてみるとHUVECにおいて用量依存性に生理的濃度のセロトニンはeNOSとERK1/2が活性化することが判明した。HUVEC上のセロトニン受容体を調べたところセロトニン2Bとセロトニン2C受容体があることを確認した。そこで選択的セロトニン2B受容体であるSB20474はセロトニンよるeNOSとERK1/2の活性化が阻害されたが、選択的セロトニン2C受容体であるRS102221はセロトニンよるeNOSとERK1/2の活性化を阻害しなかった。以上のことからセロトニントランスポーターノックアウトマウスにおける腫瘍増大の抑制はセロトニンの枯渇によるセロトニン2B受容体の生理的刺激の減少が原因であると考えられた。鬱の患者はセロトニン伝達が阻害されている状態と考えられるが、むりに治療によりセロトニン伝達を上昇させると、癌の進展の観点から悪影響を与える可能性がある。近年、セロトニンやその受容体を修飾する薬剤が広く臨床の場で使われているが、そういった薬剤を応用して分子標的治療薬の開発の可能性がある。
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Research Products
(3 results)