2007 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス制御による高齢者呼吸器疾患の新たな治療法の確立
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19590690
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
中山 勝敏 Jikei University School of Medicine, 医学部, 講師 (40321989)
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / スタチン / ライノウイルス / ICAM-1 |
Research Abstract |
【研究目的】ライノウイルス(RV)感染はCOPD急性増悪を惹起する。COPD急性増悪は死亡に関与する重要な因子である。RV主要型(RV14)は、ICAM-1を感染受容体とし、酸性エンドゾームを介して細胞内に移行する。呼吸器病態の酸化ストレスを制御しうる薬剤として、脂質異常症治療薬として使用されるスタチンに注目し、その抗ライノウイルス感染効果を検討した。【研究方法】ヒト培養気道上皮に対し、ピタバスタチン処理後(1.0μM,3日)RV14感染を行ない、経時的RV収量を評価した。また、ピタバスタチン処置によるICAM-1発現および酸性エンドゾーム強度の変化を検討した。【研究結果】RV収量はコントロールに比し有意に抑制された(1-3日,ピタバスタチン処置群1.1±0.1 logTCID_<50>/mL/日 vs 対照群4±0.2logTCID_<50>/mL/日,p<0.0l)。sICAM-1発現は有意に抑制されたが、酸性エンドゾーム抑制効果は認められなかった。同様の実験をロバスタチン(日本未発売)においても施行した。その結果、ピタバスタチンと同様にICAM-1の発現とウイルス収量は有意に抑制したが、酸性エンドゾーム抑制効果は認められなかった。【成果の意義・重要性】2種類のスタチンによりライノウイルスの増殖は約1000分の1にまで抑制された。その機序の一つとして感染受容体の発現抑制が考えられた。スタチンによる、このように強い抗ライノウイルス感染活性が示されたのは、世界で初めてである。従って産業財産権の出願・取得を検討したが、一方でスタチンによるHIVウイルスに対する抗ウイルス活性が近年報告されたばかりであった。ウイルス種が異なるが、特許の取得は不可であった。
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