2008 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシンドロームが惹起する心血管疾患の予防・治療を目指した漢方方剤の創製
Project/Area Number |
19590704
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 誠 Aichi Gakuin University, 薬学部, 教授 (50191888)
|
Keywords | 漢方方剤 / 生活習慣病 / 動脈硬化症 / 核内受容体 / PPAR / 水酸化不飽和モノ脂肪酸 |
Research Abstract |
本年度は抗動脈硬化活性が期待される化合物を含有する生薬を探索する目的で、peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)に焦点を当て、91種類の生薬よりルシフェラーゼレポーターアッセイ系を利用してリガンド探索を行った。その結果、〓苡仁より水酸化モノ不飽和脂肪酸をPPARパンアゴニストとして単離同定した。そして、モノ不飽和脂肪酸は酸化されることにより、モノ不飽和脂肪酸では観察されないPPARリガンド活性を獲得し、さらにはPPARα,γ,δの3つのアイソタイプにより認識されることを見出した。単離同定した水酸化モノ不飽和脂肪酸は、脂肪細胞、肝臓細胞、骨格筋細胞において、PPARアゴニストとして作用することを確認した。次に、厚朴より単離同定したRXRアゴニストであるホーノキオールの作用を詳細に検討したところ、マクロファージにおいてLXRの標的遺伝子であるABCA1の発現を単独で活性化し、LXRアゴニスト共存下では相乗的に活性化することを見出した。さらに、骨格筋細胞においてPPARδの標的遺伝子であるアンカップリングタンパク質(UCP2)のmRNAの発現を単独で活性化し、PPARδアゴニストの共存下では相乗的に誘導した。また、前骨髄性白血病細胞の分化を、レチノイン酸存在下で著しく促進した。これらの結果より、ホーノキオールはRXR/LXR,RXR/PPARα,γ,δ,RXR/RARを介して、各種の遺伝子の発現を活性化できることが明らかになった。 これらの結果に基づき、動脈硬化に有効であると考えられる生薬として、黄連、厚朴、蒼朮、〓苡仁、陳腐、紅花、茵陳蒿、甘草、生姜などを選別した。そして、それらを組み合わせた新規漢方方剤を熱水抽出エキスを作製し、大腿動脈ligationモデルマウスの動脈硬化病変の形成に及ぼす効果を検討した。黄連(2g)、甘草(2.5g)、厚朴(8g)、蒼朮(6g)、大棗(6g)、生姜(2g)、陳皮(4g)、〓苡仁(10g)、紅花(2g)よりなる新規漢方方剤に大腿動脈の(新生内膜+中膜)/血管面積比を減少させる作用が観察された。今後、新規漢方方剤の動物モデルでの効果をさらに詳細に解析し、有用な漢方方剤の創製を目指したい。
|