2007 Fiscal Year Annual Research Report
食道・胃接合部の内腔で発生する-酸化窒素による周囲組織細胞間結合装置の障害
Project/Area Number |
19590710
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 克則 Tohoku University, 病院, 助教 (60375003)
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Keywords | 消化器学 |
Research Abstract |
今年度はまずex vivoのUssing chamberを用いたモデルによる実験を行い、酸性条件下、亜硝酸塩より発生させた活性酸化窒素種(RNOS)により、ラット胃粘膜がどのような傷害を受けるか検討し、実際のヒト食道胃接合部の粘膜傷害に関連付けことを目的とした。食道胃接合部内腔およびその周囲粘膜の微小環境を再現するため、ラットの胃粘膜のみを摘出し、管腔側と基底側で別々の溶液を還流させるUssing chamberモデルを用いた。管腔側の溶液には、pH2.5の酸性条件下で生理的範囲内の濃度の亜硝酸ナトリウム(NaNO_2)を加えRNOSを発生させて曝露した。粘膜のバリア機構の評価に関しては、電気生理学的な粘膜抵抗の測定、^3Hで標識したマンニトールの管腔側から基底側への透過速度の測定、さらに粘膜表層上皮細胞間でバリア機構を形成するtight junctionの傷害をみるため、tight junction関連蛋白であるoccludinの免疫染色およびWestern blotを行った。実際に粘膜内にNOをはじめとしたRNOSが拡散しているか確認するために、RNOSと組織中蛋白との反応生成物であるDNIC(Dinitrosyl dithiolato iron complex)を低温下でEPR法(electron paramagnetic resonance spectroscopy)を用いて測定することで検討した。Ussing chamberにて粘膜側にRNOSを曝露した結果、粘膜抵抗の低下および粘膜透過性の亢進、さらに免疫染色とWestern blotでtight junction関連蛋白であるoccludinの発現低下を認めた。また発生したRNOSの粘膜内への拡散を組織中DNICを低温EPR法で検出することにより確認した。ヒト食道胃接合部内腔およびその周囲粘膜の微小環境を再現したこのラットにおける検討において、食道胃接合部内腔で発生したRNOSがその周囲粘膜のtight junctionを傷害し、それによって粘膜防御機構を低下させることが示された。RNOSの化学修飾作用によるストレスが、ヒト食道胃接合部における重要な傷害因子となることが示唆された。
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