2007 Fiscal Year Annual Research Report
非アルコール性脂肪性肝炎発症に関わる鉄代謝異常の分子機構解析と治療法の開発
Project/Area Number |
19590780
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
高田 弘一 Sapporo Medical University, 医学部, 助教 (90398321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 淳二 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20244345)
瀧本 理修 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10336399)
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Keywords | NASH / 鉄代謝 / 鉄吸収試験 / Hepcidin / 除鉄療法 |
Research Abstract |
本邦における非アルコール性脂肪肝(NAFLD)患者は約800万人にものぼると推定されている.NAFLDの中の約10%にあたる80万人が肝硬変に進展し,さらには肝細胞癌の発生母地となる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)であると考えられている.しかしながら,NASHの発症・進展の機序は依然不明であり,その治療法も確立されていないのが現状である.最近NASHの発症・進展には肝への鉄過剰蓄積によって惹起される酸化ストレスの関与が示唆されている.われわれの検討結果から,NASHにおいては肝臓に鉄が過剰に蓄積し,血清フェリチン値やトランスフェリン飽和度が上昇していることから,鉄がNASHの病態を修飾していると考えられる.また,肝内鉄過剰の原因として消化管からの鉄吸収が亢進していることが推測された.その機序は,十二指腸粘膜での鉄吸収分子であるDMT1,DcytbおよびHephaestinの発現が上昇していることによると考えられた.一方,消化管からの鉄吸収が亢進する機序の一つとしてHepcidin産生が低下している可能性を想定し検討したが,その発現量は鉄過剰状態を反映し増加していた. NASHに対する除鉄療法(瀉血+低鉄栄養療法)は,血清ALT値およびIV型コラーゲン値を有意に改善させ,かつ組織学的改善も得られ有効な治療であることを明らかにした.さらに,治療前増加していた酸化的DNA障害のマーカーの一つである8-OH-dG量が除鉄療法を48週間施行することにより低下することも見出した.したがって,除鉄療法により酸化ストレスを軽減することにより,肝炎を沈静化させるのみならず,将来的にはNASHからの肝発癌率を低下させうる可能性が示唆された.
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