2008 Fiscal Year Annual Research Report
内因性心臓保護機構の分子解明-新しい心不全治療法の開発に向けた基盤的研究
Project/Area Number |
19590845
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
岸本 一郎 National Cardiovascular Center Research Institute, 動脈硬化代謝内科, 医長 (80312221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳留 健 国立循環器病センター(研究所), 病因部, 室長 (00443474)
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Keywords | ナトリウム利尿ペプチド / RGS / 心肥大 / 心臓リモデリング |
Research Abstract |
心不全の発症および進展機構の詳細な解明とそれに基づく新しい治療法の開発には、心不全の病態に関わる新しい標的分子を探し出すことが大きな意味を持つ。心不全修飾因子として遺伝子発現が検討されたものの中で、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はどの報告においても必ず上位に位置しており、またANP,BNPの遺伝子発現は顕著な心臓特異性を示す(このため血中BNP濃度は心不全診断に臨床応用されている)。さらに、ANP・BNPの情報伝達系は心不全の発症および進展に深く関与することが示唆されている。しかしながら、従来まではANP・BNPの心臓作用の詳細は明らかではなかった。本研究では、まずANP・BNPとその共通の受容体(guanylyl cyclase(GC)-A)の情報伝達系が心臓を保護する詳細なメカニズムを検討し、ANP・BNP/GC-A系がGqたんぱく質とその心肥大促進シグナルを抑制的に調節することを明らかにした(平成19年度)。さらに、この作用の鍵となる重要因子としてregulator of G protein signaling(RGS)に着目し、内因性ナトリウム利尿ペプチドが、RGSを介して心臓保護に働く機序を分子解明できた(平成20年度)。RGSは、心臓局所におけるアンジオテンシン系や交感神経系の情報伝達と密接に関わっており、ナトリウム利尿ペプチドがRGSを介してこれら心臓肥大促進系に対して拮抗的に作用するという内因性のフィードバック機序が初めて明らかにできた。内因性の抑制因子に着目してその完全な分子作用機構を解明することは、国内外を問わず新しい試みであり、大きな成果が得られたと考えている。また、本研究により明らかとなった内因性RGSの心臓における意義は、RGS関連の遺伝子診断や新規薬剤の臨床応用を加速させる基盤となることが期待される。
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